ダークマターを探る

XMASS実験に採用された極低放射能光電子増倍管
まだ誰も見たことのない、謎の暗黒物質の直接観察に挑む。

XMASS実験用「極低放射能」光電子増倍管

XMASS実験用「極低放射能」光電子増倍管

およそ4年の歳月をかけ、-110℃という低温下での動作、波長175nmにおける量子効率 30%以上、光電子増倍管自体からRIを極限まで低減したPMTが完成しました。それは光電子増倍管の高感度・高速応答をはじめとする諸特性を維持しながら非常に特殊な(苛酷な)環境で動作させることへの挑戦でした。

光検出器としての性能部分のみならず、光電子増倍管の容器部分の性能を達成するためにも多くの課題に挑むこととなり、これまで永年に渡り培ってきた多くの製造ノウハウを投入し応用することを繰り返すことで実現した特殊な光電子増倍管です。

 

ダークマターとは?

What is dark matter?

宇宙が何でできているかを調べてみると、われわれが知っている陽子や中性子など“目に見える”(観測されている)物質は全体の約4パーセントにすぎません。その5~6倍は未知の物質(ダークマター)が占めていると考えられます。残りはダークエネルギーと呼ばれている正体不明のものです。これまで観測に利用されてきたのは、光やX線、赤外線などの電磁波ですが、”暗黒”物質というのは、電磁波での観測では見ることができないため、”暗黒(ダーク)”という呼び名がついています。

 

XMASS実験

XMASS検出器が置かれている実験室全体図[画像提供:東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設]

XMASS検出器が置かれている実験室全体図[画像提供:東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設]

XMASS(エックスマス)実験は、液体キセノン(約-110℃)を用いてダークマターを直接探索することを目的としています。現在、神岡の地下施設に約800kgの液体キセノンを用いたXMASS検出器が設置されています。

また、XMASS実験はダークマターだけでなく、太陽ニュートリノ、ダブルベータ崩壊の検出にも焦点を当てた多目的実験です。これが実現できる理由は、低いバックグラウンド環境と液体キセノンにあります。岐阜県神岡町の地下約1000mで実験の邪魔になる放射線を遮断し、 純粋な水で囲われた検出器中では、ダークマターのわずかな信号もキャッチできるのです。

 

800kg液体キセノン検出器に取り付けられている光電子増倍管の数:642本

[画像提供:東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設]
[画像提供:東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設]

 

ダークマターからの信号は非常に稀で、なおかつ、非常に小さいエネルギーであるため、放射線バックグランドをいかに落としてエネルギーしきい値を下げるかにかかっています。XMASSグループでは、この実験に特化した“極低放射能”光電子増倍管を浜松ホトニクスと共同で開発しました。この光電子増倍管は、効率良く液体キセノンからのシンチレーション光を検出するだけでなく、光電子増倍管自身に含まれるウランやトリウムが従来のものよりも2桁以上少ないものになっています。

 

既存のダークマター探索実験の検出器とXMASS検出器の感度比:50倍

検出器の感度は、既存のダークマター探索実験の感度よりも50倍良く、ダークマターを直接捕らえ、発見できる可能性が高いと考えられています。 XMASS実験では今後、ダークマターだけでなく、スーパーカミオカンデでは観測できない低エネルギー太陽ニュートリノ実験やニュートリノの質量を測定する2重ベータ崩壊実験が展開されて行く予定です。

 

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