ヒッグス粒子を探る

ヒッグス粒子の存在の確定に貢献したSSDとAPD
宇宙誕生の謎に迫る。

スイス、ジュネーブの郊外。CERN(欧州原子核研究機構)の全長27kmに及ぶLHCプロジェクト。そのセンサ部分には、SSD(シリコン・ストライプ・ディテクタ)、APD、光電子増倍管が採用されています。私たち浜松ホトニクスの光のテクノロジーは、人類の英知が結集する高エネルギー物理学の最前線で活躍しています。

SSD

SSD

APD

APD

 

Keyman Interview

ATLAS実験装置用SSD開発者インタビュー
ATLAS実験装置用SSD開発担当者
浜松ホトニクス 固体事業部 山村和久

 

CMS実験装置用APD開発者インタビュー
CMS実験装置用APD開発担当者
浜松ホトニクス 固体事業部 石川嘉隆

 

ヒッグス粒子とは

円形の赤線の地下約100メートルに周長27kmのLHCプロジェクトのトンネルがある。黄色丸は4つの実験装置の設置場所。[画像提供:CERN]

円形の赤線の地下約100メートルに周長27kmのLHCプロジェクトのトンネルがある。黄色丸は4つの実験装置の設置場所。[画像提供:CERN]

ヒッグス粒子はあらゆる物質に質量を与える粒子で、神の粒子と言われていますが、これまで発見されていませんでした。CERN(欧州原子核研究機構)は、スイス・ジュネーブ郊外にある円周27kmの世界最大の粒子加速器「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」で実験を続ける中で、ヒッグス粒子の存在を確認することを目指していました。2013年、その存在が確定され、半世紀前にヒッグス粒子の存在を予言したフランソワ・アングレール名誉教授、ピーター・ヒッグス名誉教授が2013年のノーベル物理学賞を受賞されました。

 

当社検出器の役割

陽子と陽子を光に近い速度で衝突させると、そのエネルギーから新たな粒子が発生します。浜松ホトニクスの検出器は、その粒子の飛んだ方向(飛跡)とエネルギーを検出して、粒子の性質を調べるために使用されています。ATLAS/CMS実験装置において、粒子の飛跡検出器としてSSDが使用されています(1999年納入開始)。また、粒子のエネルギーを検出するカロリメータ用に微弱光検出器としてATLAS/CMSでは光電子増倍管が、CMSではAPDが使用されています。

 

ヒッグス粒子崩壊シミュレーション[画像提供:CERN]

ヒッグス粒子崩壊シミュレーション[画像提供:CERN]

CERNから「The CMS Award」を2003年、2005年に受賞

CERNから「The CMS Award」を2003年、2005年に受賞

 

飛跡検出用センサとしてATLAS/CMS両実験装置に採用されたSSD

CMS実験装置に取り付けられたシリコン・ストライプ・ディテクタ[画像提供:CERN]

CMS実験装置に取り付けられたシリコン・ストライプ・ディテクタ[画像提供:CERN]

ATLAS実験装置では約14,000個、CMS実験装置では約22,000個のSSDが使われています。SSDは、ストライプ形状のダイオードアレイで、粒子の透過した位置を数十μmの分解能で検出します。

 

シリコンウエハ1枚から作られるSSDは1個

SSDの形状は検出器の取付け場所に応じて、さまざまな形があります。

SSDの形状は検出器の取付け場所に応じて、さまざまな形があります。

高エネルギー物理実験では、衝突時に発生する粒子のエネルギーの増加に伴って、検出器の大型化が求められています。当社では、6インチシリコンウエハから1チップしか取ることのできない大型のSSDを開発しました。当社の高い検出器製造能力によって、LHCプロジェクトにおいて大面積・高品質のSSDをほぼ予定通り納入することができました。

 

LHD加速器に使われたSSDの放射線耐性:1.5Mrad/year = 1.7Sv/h

加速器の超伝導電磁石[ 画像提供:CERN ]

加速器の超伝導電磁石[ 画像提供:CERN ]

CERNのLHCプロジェクトには1,232台の超伝導電磁石が設置されていて、その磁力により陽子ビームを曲げています。そのため、LHCプロジェクトでの放射線レベルは自然放射量の約600万倍に達します。SSDはこの過酷な放射線レベルの環境で、5年以上耐えられる高信頼性を実現しています。2020年以降に始まるHL(Hight Luminosity)-LHCプロジェクトなど、次期粒子衝突実験の飛跡検出器の放射線環境は、2008年開始のLHCプロジェクトの5~10倍になる予定で、こうした環境でも使用可能な次世代SSDを開発しています。

 

CMS実験でカロリメータとして使われた浜松ホトニクス製APDの数:130,000個

CMS実験でカロリメータとして使われたAPDとシンチレータ[ 画像提供:CERN ]

CMS実験でカロリメータとして使われたAPDとシンチレータ[ 画像提供:CERN ]

APDの受光面のサイズは、5mm×5mm。シンチレータと組み合わせて使用されています。高磁場中で放射線が発生する過酷な環境下で、最適な性能が求められるため、高磁場に強い光半導体素子が採用されました。APDの仕様には、「放射線に強く、低ノイズ」で、「高感度、低容量、特性の均一性」であることが求められました。それぞれの仕様が相反する関係にありましたが、構造を見直すことで、必要とされる仕様を実現しました。

 

カロリーメータ用APDの量子効率:70%

CMS実験装置では、放出された放射線はシンチレータで可視光に変換し、当社製APDが検出します。その微弱な光をとらえるためAPDは量子効率※70%という高感度を実現しています。

※入射光子1つ当たりの出力電子数のこと。

 

カロリメータ用APDの概念図
カロリメータ用APDの概念図

 

ページの先頭へ