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分光器の仕様を学ぶ | 分光器

波長範囲

波長範囲とは、分光器が検出できる波長の範囲のことを表します。分光器の波長範囲は、基本的にグレーティングの刻線数とセンサの横方向 (波長軸方向) の画素数で決まります。

グレーティングの刻線数が違う場合

センサの画素数が同じ場合、グレーティングの刻線数が少なく(粗く)なるほど波長範囲は広くなりますが、波長分解能は低くなります。(図1)

反対に、グレーティングの刻線数が多く(細かく)なるほど波長範囲は狭くなりますが、波長分解能は高くなります。(図2)

図1:グレーティングの刻線数が少ない (粗い) 場合

図2:グレーティングの刻線数が多い (細かい) 場合

センサの画素数が違う場合

グレーティングの刻線数が同じ場合、センサの画素数が多くなるほど波長範囲が広くなり(図3)、センサの画素数が少なくなるほど波長範囲が狭くなります(図4)。

※センサの画素サイズは同じと仮定

図3:センサの画素数が多い場合

図4:センサの画素数が少ない場合

波長分解能

波長分解能とは、分光器において光を検出する際にどの程度細かく波長を分けることができるかの指標です。例えば波長分解能が1 nmの分光器では500 nmと501 nmの差を分別できますが、波長分解能が5 nmの分光器では500 nmと501 nmの差は分別できません。ポリクロメータの場合、波長分解能は入射スリット幅、グレーティングの刻線数、センサの画素サイズといった要素の組み合わせで決まります。(厳密には分光器内部の光学設計や使用している光学部品の性能なども影響します。)

グレーティングの刻線数が違う場合

この点は、「波長範囲」で説明したものと同様です。

センサの画素数が同じ場合、グレーティングの刻線数が少なく(粗く)なるほど波長範囲は広くなりますが、波長分解能は低くなります(図5)。反対に、グレーティングの刻線数が多く(細かく)なるほど波長範囲は狭くなりますが、波長分解能は高くなります(図6)。

図5:グレーティングの刻線数が少ない (粗い) 場合

図6:グレーティングの刻線数が多い (細かい) 場合

入射スリットの幅が違う場合

入射スリットは、分光器に入射する光の波長の空間的広がり(分散)を制限する役割を担っています。分光器内部の光学系が等倍で結像をする場合、入射スリットの幅が狭いほど分解能は高くなり、入射スリットの幅が広いほど分解能が低くなります。ただし、画素サイズより入射スリットを狭くしても、画素サイズ以下の分解能は得られません。

入射スリットの幅が画素サイズよりも狭い場合(図7)、ある画素には特定の波長の光のみが入射することになりますが、入射スリットの幅が画素のサイズよりも広い場合(図8)、ある波長の光はある1画素のみに入射せず、隣の画素にも入射してしまうため分解能が低下します。

図7:入射スリット幅が画素サイズよりも狭い場合

図8:入射スリット幅が画素サイズよりも広い場合

画素サイズが違う場合

センサの画素サイズが大きい場合(図9)、グレーティングで波長を細かく分解できていたとしても複数の波長が同じ画素に入射してしまうため、分解能が低下してしまいます。

センサの画素サイズが小さい場合(図10)、グレーティングで分解された光は波長ごとに別々の画素に入射するため、分解することができます。

図9:センサの画素サイズが大きい場合

図10:センサの画素サイズが小さい場合

高波長分解能のおすすめ製品

波長範囲:200 nm ~ 900 nm

波長分解能:≦0.9 nm

波長範囲:790 nm ~ 1050 nm

波長分解能:≦0.4 nm

波長範囲:200 nm ~ 800 nm

波長分解能:≦1.0 nm

ダイナミックレンジ

ダイナミックレンジとは、分光器がデータとして表示できる信号の最大値と最小値の範囲のことで、飽和電荷量(Full well capacity)を読み出しノイズ(Readout noise)で割った値で定義されます。ダイナミックレンジが高いほど、弱い信号と強い信号を一度に測定することができます。ダイナミックレンジが低い場合、弱い信号を検出できるようにすると強い信号が飽和してしまい、強い信号を検出しようとすると弱い信号を検出できなくります。

ダイナミックレンジが必要な用途としては、レーザ光やプラズマの発光のように強い光を計測するケースや、発光材料のバンド端発光のように非常に微弱な光を測定するケース等があります。

OPAL-Luxe 高ダイナミックレンジ分光器の測定例

レーザ計測

従来の分光器ではレーザ光などの強い光を計測する場合、露光時間を長くすると強いレーザ信号で検出器が飽和するため、他の波長に含まれている微弱光との同時計測が難しく、レーザ光をフィルタ等でカットする必要がありました。OPAL-Luxeでは、微弱光でも高いS/Nの計測性能を実現し、強い発光と微弱な発光が同時に存在するプラズマ発光計測などにも適しています。

ガリウムナイトライド計測

化合物半導体ガリウムナイトライド(GaN)をヘリウムカドミウムレーザ(波長325 nm)で励起した場合のフォトルミネッセンス(PL:Photoluminescence)計測例です。弊社従来モデル(PMA-12)では検出できなかったバンド端発光と蛍光スペクトルを高いS/N で計測できました。

高ダイナミックレンジのおすすめ製品

ダイナミックレンジ  2 500 000 : 1

センサ

可視光域の分光器(ポリクロメータ)の検出器には一般的にCCDセンサやCMOSセンサが使用されます。CCDセンサには電子冷却型のものがあり、暗電流が低い傾向にあります。CCDセンサの一番の特長は、縦ビニングができるという点です。ビニングとは複数の画素をまとめて1つの画素とみなして取り込む方式のことですが、その中でも縦ビニングとはセンサの縦方向の画素を足し合わせて取り込む方式のことです。縦方向の画素をまとめて1つの画素とみなして取り込むことで足し合わせた画素の数だけ信号量が増加するのに対し、読み出し時に発生するノイズは1回のみになるため、S/Nが向上します。

ミニ分光器に搭載されているCMOSイメージセンサはリニアタイプであり、パッシブピクセル型とアクティブピクセル型があります。

パッシブピクセル型は、CCDと同様アンプが一つのため、出力の均一性が高いというメリットがあります。また、飽和電荷量も高いため分光分析などの用途で多く使用されています。アクティブピクセル型は画素ごとに読み出しアンプがついているため、出力の均一性や飽和電荷量はパッシブ型に劣る一方、感度が高く読み出し速度が速いというメリットがあります。

図11 : CCDセンサの模式図

図12 : パッシブピクセル型CMOSセンサの模式図

図13 : アクティブピクセル型CMOSセンサの模式図

センサ CCD パッシブピクセル型CMOS アクティブピクセル型CMOS
画素間のノイズのばらつき
飽和電荷量
暗電流ノイズ
繰り返し速度
小型化、低価格化

CCDセンサを使用したおすすめ製品

波長範囲:200 nm ~ 900 nm

波長分解能:≦0.9 nm

波長範囲:200 nm ~ 800 nm

波長分解能:≦4 nm

パッシブピクセル型CMOSセンサを使用したおすすめ製品

波長範囲:340 nm ~ 780 nm

波長分解能:≦12 nm

アクティブピクセル型CMOSセンサを使用したおすすめ製品

波長範囲:340 nm ~ 830 nm

波長分解能:≦2.3 nm

波長範囲:190 nm ~ 440 nm

波長分解能:≦5.5 nm

露光時間

露光時間は、分光器に搭載されているCCDセンサやCMOSセンサが信号を蓄積する時間のことを表します。露光時間を長くするほど多くの光子がセンサに入射するため、微弱な信号を捉えることができます。一方で、露光時間を長くするほど測定にかかる時間も長くなるため、単位時間当たりの測定回数が少なくなります。

例えば、露光時間が100 msの場合は、1秒間に10回の測定ができますが、露光時間が1 sの場合は、1秒間に1度の測定しかできません。

 

※厳密には露光時間にセンサの読み出しにかかる時間も考慮し繰り返し速度を計算する必要があります。

露光時間 長くした場合 短くした場合
感度 高い 低い
暗電流ノイズ 多い 少ない
繰り返し速度 遅い 速い

繰り返し速度

繰り返し速度は、分光器で測定をする際にデータを取得し、処理することのできる速度のことを指します。モノクロメータの繰り返し速度は主にグレーティングの回転速度に依存し、ポリクロメータの繰り返し速度は主にセンサの読み出し速度に依存します。繰り返し速度が速いほど測定光の高速な変化を測定することができます。

一般的にモノクロメータはグレーティングの角度を回転させる必要があるため繰り返し速度が遅く、ポリクロメータはグレーティングを動かさずに複数の波長を同時に測定できるため繰り返し速度が速い傾向にあります。ただし、ポリクロメータの場合はCCDやCMOSの読み出し速度が速くなればなるほど読み出しノイズも大きくなる傾向にあるため、速度とノイズはトレードオフの関係にあります。繰り返し速度が速いと、同じ測定時間で多くの積算(平均化)が可能になるため、測定したデータのS/Nを向上させることができます。

分光器 モノクロメータ ポリクロメータ
繰り返し速度 遅い 速い

センサ CCD CMOS
繰り返し速度 遅い 速い

*ポリクロメータの中でも一般的にセンサがCCDのものは繰り返し速度よりも感度重視、センサがCMOSのものは速度重視のものが多い。

暗電流

暗電流とは、センサの熱に起因して発生するノイズのことです。センサを冷却することでノイズの低減が可能ですが、冷却のための部品が追加されるため筐体サイズが大きくなるというデメリットがあります。また、暗電流は露光時間を伸ばすほど加算されるノイズのため、露光時間を長くしないと検出できないような非常に微弱な信号を測定する際は、冷却機能を搭載した分光器を使用することが推奨されます。

分光器の選び方

浜松ホトニクスは、高性能な据え置き型の「分光器」、光学系、イメージセンサ、読み出し回路等をコンパクトな筐体にまとめた「ミニ分光器」、MEMS技術とイメージセンサ技術を用いて実現した指先大の非常に小さな「分光器ヘッド」などさまざまな種類の分光器をラインアップしています。

こちらのページでは、さまざまな分光器のラインアップから用途に合った製品を選ぶためのヒントを紹介しています。波長範囲、波長分解能、筐体サイズから製品仕様を比較いただけます。

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