分光器 分光器

分光器とは | 分光器

分光とは

分光とは、光を波長ごとに分けることを言います。私たちは日常生活の中でも分光の結果起きる現象を目にすることがあります。例えば、CDが虹色に見えるのはCDの表面に刻まれた微細な凹凸がグレーティングの役割をし、当たった光を分光しているためです。また、雨の後に虹が見えるのは、空気中に漂っている水の粒がプリズムの役割をし、太陽の光を分光するためです。

 

この分光という現象を応用し、光の波長ごとの強度を測定する装置を分光器と呼びます。分光器によって光を波長ごとに分光し測定することで、測定対象の色を測定したり、測定対象の中の成分を分析することなどが可能になります。

図1 : 日常で目にする分光の例

どのように光を分けるか

分光器では、基本的に分散素子という光を波長ごとに分ける機能を持つ素子を用いて分光します。代表的なものとしてプリズムやグレーティング (回折格子) がありますが、分散の特性が高いことから近年は多くの分光器でグレーティングを使用することが主流となっています。

図2 : 分散素子の例

分光器ではどのようなデータが得られるか

分光器は、「波長ごとに分光した光の強度」を測定しています。そのため、分光器で測定されたデータは図3のように横軸が光の波長、縦軸が光の強度のグラフとして表示されます。このデータはスペクトルと呼ばれます。

分光器では、測定対象を透過した光のスペクトルを示す透過スペクトル、測定対象が吸収した光の量を示す吸収スペクトル、励起光によって励起された測定対象が放出する蛍光の強度を示す蛍光スペクトルなどのさまざまな種類のスペクトルを測定することができます。

測定できるスペクトルデータの範囲(波長範囲)や、データの細かさ(波長分解能)は分光器によって異なります。

詳しくは分光器の仕様を学ぶをご参照ください。

図3 : スペクトルデータの例

分光器の用途例

分光器はさまざまな用途で使用されます。以下は分光器が使用される用途の一例です。

発光材料評価

発光材料

食品検査

膜厚測定

環境モニタリング

水質検査

プラスチック選別

天文

光通信

光通信

物質の分析

プラズマ測定

色計測

色計測

分光器の種類

分光器には主にプリズムやグレーティングなどの分散素子を用いた分光器と、マイケルソン干渉計やファブリペロー干渉計などの干渉計を用いた分光器があります。以降では分散型の分光器、干渉型の分光器それぞれの原理や仕組みを説明します。

分散型

分散型の分光器は、プリズムやグレーティング等の分散素子を用いた分光器のことを指します。分散型の分光器は大きくモノクロメータとポリクロメータに分かれます。

モノクロメータとポリクロメータ

モノクロメータとは、検出器に光電子増倍管やフォトダイオードなどのポイントセンサを使用した分光器のことを指します。検出器がポイントセンサのため、センサの前に出射スリットを置くことで特定の範囲の波長のみを取得するという仕組みになっています。出射スリットの幅を変えることで波長分解能を調整することができるため波長分解能を高くすることができる一方、モノクロメータで複数の波長を測定する際は、グレーティングの角度を回転させる必要があるため、ポリクロメータと比べて測定に時間がかかります。

 

ポリクロメータとは、検出器にCCDラインセンサやCMOSラインセンサ等を使用した分光器のことを指します。ラインセンサは波長方向に複数の画素を持っているため、グレーティングを回転させることなく同時に複数の波長を取得することができます。ポリクロメータの場合、画素のサイズが出射スリットの役割を担うため、出射スリットを必要としませんが、画素サイズが波長分解能に直結するためモノクロメータと比較して波長分解能が低くなる傾向にあります。

分光器 メリット デメリット
モノクロメータ
  • 測定波長や、出射スリットのサイズ (波長分解能) 等を柔軟に調整可能。
  • 複数の波長を測定する場合、グレーティングの角度を変える必要があるため、測定に時間がかかる。
  • グレーティングが可動するため、角度調整の精度や再現性が要求される。
ポリクロメータ
  • 一度に複数の波長を測定できるため、高速な測定が可能。
  • グレーティングが可動しないため、波長再現性が高い。また、筐体をコンパクトにできる。
  • センサの画素数や画素サイズが測定可能な波長範囲や波長分解能を決めてしまうため、モノクロメータと比較して波長分解能が低い傾向にある。

図4:モノクロメータの構造図

図5:ポリクロメータの構造図

干渉型

干渉型の分光器は、マイケルソン干渉計やファブリペロー干渉計などの干渉計を用いた分光器のことを指します。

フーリエ変換赤外分光法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy : FTIR)

フーリエ変換赤外分光法(以下FTIR)とは、マイケルソン干渉計と呼ばれる可動ミラー、固定ミラー、ビームスプリッタ、光検出器からなる干渉計を応用し、波長ごとの光の強度を得る分光法です。

FTIRの原理は、光源から発せられた光線をビームスプリッタで2つの経路に分割し、一方を可動ミラーに、もう一方を固定ミラーに照射します。その後、それぞれのミラーで反射された光線が再びビームスプリッタに戻り、二分された光線の光路差によって生じた光干渉信号を検出器で取得します。検出した信号を数学的分離(フーリエ変換)することによって波長ごとの光強度を取得することができます。

 

FTIRの主なメリットは以下です。

  • 全波長域同時測定によるS/Nの高さ(Fellgett Advantage)
  • スリット等を必要としないことによるスループットの高さ(Jacquinot Advantage)
  • レーザ校正による波長精度の高さ(Connes Advantage)

 

従来のFTIRではステッピングモータのような可動ミラーを使用するため、巨大なベンチトップ型のデバイスが主流でした。

浜松ホトニクスのFTIRエンジンは光干渉計の構築にMOEMS(Micro Optical Electro Mechanical Systems)技術を応用することで装置の超小型化に成功しました。

図6:一般的なマイケルソン干渉計の模式図

図7:浜松ホトニクスのFTIRエンジン模式図

ファブリペロー (Fabry–Pérot Interferometer : FPI) 分光センサ

ファブリペロー干渉計(以下FPI)とは、2つの反射平面の間で光を多重反射・干渉させることによって特定の波長の光だけを取り出す分光装置です。光が2つの反射平面を繰り返し反射する際、その光は干渉します。干渉した光はその位相によって強め合ったり弱めあったりしますが、この位相は波長によって異なります。ファブリペロー干渉計では2つの反射面の距離を調整することで特定の波長の光のみを強め、取り出します。

 

浜松ホトニクスのMEMS-FPIチューナブルフィルタは、エアギャップを介して上部ミラーと下部ミラーを対向させています。ミラー間に電圧を印加し、その静電引力によってエアギャップの調整を行います。このエアギャップがmλ/2の時におおむね波長λが透過するフィルタとして機能します(m:整数)。本製品は、MEMS-FPIチューナブルフィルタと単素子の受光素子を組み合わせたシンプルな構成により、超小型で低価格の分光センサを実現しています。

図8:ファブリペロー干渉計の模式図

図9:浜松ホトニクスのMEMS-FPIチューナブルフィルタ模式図

浜松ホトニクスの分光器ラインアップ

浜松ホトニクスは、高性能な分光器、小型のミニ分光器、マイケルソン光干渉計と制御回路を内蔵したFTIRエンジン、MEMS-FPI分光センサ・光源を内蔵したMEMS-FPI分光モジュール等様々な分光器を販売しています。

分光器の選び方

浜松ホトニクスは、高性能な据え置き型の「分光器」、光学系、イメージセンサ、読み出し回路等をコンパクトな筐体にまとめた「ミニ分光器」、MEMS技術とイメージセンサ技術を用いて実現した指先大の非常に小さな「分光器ヘッド」などさまざまな種類の分光器をラインアップしています。

こちらのページでは、さまざまな分光器のラインアップから用途に合った製品を選ぶためのヒントを紹介しています。波長範囲、波長分解能、筐体サイズから製品仕様を比較いただけます。

分光器の仕様を学ぶ

分光器を選定する基準には、波長範囲、波長分解能、筐体サイズ等の他にも、ダイナミックレンジ、センサの種類などさまざまな仕様が存在します。さらに詳しく分光器の仕様を理解し、比較検討を行いたい場合は分光器の仕様を学ぶページをご参照ください。

アプリケーション : 発光材料評価

発光材料評価 アプリケーションページでは、発光材料や発光デバイスの特性を評価するための手法や原理、測定機器、測定事例などを紹介しています。

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