獣医病理を「デジタル」で支える

公開日:2025年3月12日

 

デジタル化された獣医病理学ワークフロー

2013年からバーチャルスライドスキャナで鏡検のデジタル化をはじめ、2020年にNanoZoomerを導入した株式会社アマネセル。バーチャルスライドスキャナを活用し、検査の質やサービスの向上を目指しています。

 

株式会社アマネセル

株式会社アマネセル

ペット動物専門の病理組織検査・細胞診

北海道札幌市に本社を置き、全国にある通算6000件を超える委託病院から東京営業所や大阪営業所を経由して、年間30 000件の病理検査の依頼を受けています。(2024年現在)

株式会社アマネセルのデジタル獣医病理学ワークフロー

デジタル獣医病理学ワークフロー デジタル獣医病理学ワークフロー

株式会社アマネセルのワークフロー

1. 切り出し・パラフィン包埋

2. 薄切

お預かりした湿臓器は必要に応じて切り出しを行い、パラフィン包埋によるブロックを作製します。

薄切は個々の組織の特徴に対応するため、8台のミクロトームを使い、すべて人の手で行います。

切り出し・パラフィン包理

薄切

3. 染色

4. スキャン・データ保存

(HE染色 / 特殊染色 / 免疫染色)

染色にご指定のない場合は一般染色としてHE染色を行っております。(特殊染色、免疫染色も対応可能)

作製した標本をスライドスキャナでスキャンし、デジタル化したデータを保存します。

染色

スキャン・データ保存

5. 病理検査

6. 検査レポート作成

(獣医師)

ペット動物の病理検査歴20年以上、年間30 000症例の実績に基づいた高精度の検査を保証いたします。

鮮明な顕微鏡写真付きの報告書を作成します。

病理検査(獣医師)

検査レポート作成

 

※検査種類によって報告形式が異なります。

獣医病理のデジタル化について

Q1: デジタル化した運用の概要を教えてください。

全国の動物病院から送られてくる検体から標本を作製し、検査を行ってそのレポートを提出する、これが現在行っている大まかな運用フローです。バーチャルスライドスキャナは標本を画像データ化し、そのデータを検査及び検査レポート用の写真に使用しています。現在は当社で行う組織検査の約半分(約50件/日)にバーチャルスライドスキャナを使っています。すべての検査をバーチャルスライドスキャナでできれば理想的だと思う一方で、検体によっては顕微鏡による検査の方が向いている場合もあるため、今は検体にあわせてデジタル手法での検査と、アナログ手法での検査を使い分けるようにしています。使い分けることで質の良い検査、そしてより良いサービスの提供ができていると思っています。

Q2: なぜこのような運用を考えられたのでしょうか。

 

きっかけは外出先からリモートで検査を行いたいと思ったことです。獣医療を担う企業として、新しいことに挑戦したいという気持ちもありました。そういった思いから、2013年にバーチャルスライドスキャナを導入し、デジタル化した運用を実施しています。導入後最初の1~2か月はスライド標本のスキャンに慣れずうまくいかないこともありましたが、その後は思い描いていたとおりの検査やサービスを提供することができています。

獣医病理のデジタル化について

Q3: デジタル化のメリットを教えてください。

 

デジタル化の運用に取り組む以前は倉庫にすべてのスライド標本を保管していたので、過去に作製した標本を確認する際は倉庫で標本を一枚一枚取り出して探していました。1か月くらい前の標本であれば病気の進行等の理由で再確認するケースがあるので、探す作業はそれなりの頻度で発生していました。デジタル化に取り組んでからは、画像データの保管先にアクセスしてすぐに確認することができるので探す手間が減っています。これらはデジタルデータを使った運用に取り組んだからこそ得られたメリットだと思っています。またスキャン画像の場合はPCモニタで標本の全体像を俯瞰してから病変なのかを確認できるため、導入前に比べて疑わしい箇所の特定が迅速になりました。

 

悪性腫瘍の検査後に分子標的薬の効果予測として遺伝子検査が求められる際にも、デジタル化された病理検査を実施しているメリットがあります。遺伝子検査で正しい結果を得るためには、検査のサンプルに腫瘍細胞が確実に、そしてなるべく多く含まれている必要があります。この条件を顕微鏡レベルで確認した病理標本は遺伝子検査のサンプルとして最適です。スキャン画像の場合には、PCモニタに複数の標本を並べて比較することができるので、どの標本が遺伝子検査に適しているのかを容易に選択できます。当社では遺伝子検査は外注に依頼しているのですが、その際にスキャン画像から撮影した標本の全体写真を使用して、標本のどの部位に腫瘍細胞が多く存在するかの情報提供を行っています。

このように、遺伝子検査に画像データを用いることで検査の効率や精度が上がる点も、病理検査のデジタル化がもたらすメリットだと思います。

Q4. デジタル化した運用を広げるために必要なことは何でしょうか。

スキャンするための手間や時間の短縮、またデータ容量の削減などの改善が、運用の拡大につながると考えています。特に大容量のストレージサーバを用意する必要がある点はコストの面でデメリットです。スキャンの機能として、画像データのファイル容量をもっと減らすものがあると、これらの改善が期待でき、獣医療全体でのバーチャルスライドスキャナの導入が進むと思っています。

獣医病理のデジタル化について

Q5: NanoZoomerを導入したことによって起こった変化はありましたか。

 

他社のバーチャルスライドスキャナを利用していた時は、スキャンに時間がかかっていたので、限られた時間で多くのスライド標本をデータ化するために3台のスキャナを稼働させていました。2020年からNanoZoomerを導入していますが、スキャンスピードが速いため同じ枚数の標本をNanoZoomer1台のみでデータ化できています。スキャン精度も以前のスキャナに比べて高く、標本の再スキャンが減りました。現状200枚スキャンして5枚程度の再スキャンで済んでいます。その他にも、スキャン時に標本のフォーカス位置の調整が行いやすいことや、実物に近い鮮明な色味の画像が取得できるというメリットがあり、時間のロスなく検査ができています。

 

またハードウェアやソフトウェアを含めたメンテナンスサービスがすべて国内で対応してもらえるので、トラブルがあってもすぐに対応して運用できるようになりました。他社は購入後のサービスが海外対応の場合があり、時差や言語の壁で詳細なサポートが十分に受けられない課題がありましたが、それらの心配なく運用ができるようになったのはNanoZoomerを導入したことで起こった変化だと思っています。

Q6: 今後、NanoZoomerに期待することは何でしょうか。

 

AIの技術を駆使して、より画像の精度を上げてほしいです。例えば、HE染色と免疫染色の時ではコントラストのつきやすさに違いがあり、条件によってはピントが甘くなってしまうことがあります。AIで染色ごとに自動でコントラスト調整をかけられるとフォーカスが合いやすくなり、検査精度やスピードが向上すると思います。また分割しないとスキャンできない大きな組織の観察の場合には、分割したつなぎ目を処理するために手間が発生してしまうので、そのような場合にもAIの学習機能を使って手間なく画像処理ができれば嬉しいです。

病理検査(獣医師)

株式会社アマネセルの紹介

病理検査を通じて獣医療の「夜明け(スペイン語:Amanecer)」の一翼を担うことができればとの志を胸に1996年に株式会社アマネセルを設立いたしました。ペット動物専門のコマーシャルラボとして、全国の動物病院から年間30 000検体以上の病理検査を受託しております。獣医療を担う企業としての社会的責務を考え病理検査結果のデータ化も行い、15年以上にわたり毎年「Amanecer Annual」を頒布する他、品種別のデータ集「いぬの病理なび」「ねこの病理なび」等も刊行しました。2013年からは、スライドスキャナを用いて検査標本をバーチャルスライド化し、社内鏡検をデジタル化しました。学会発表用あるいは国公立研究機関の業務用データ作製等のご依頼も頂いています。今年で29期目となりますが、これからも「臨床病理」という意識を社員全体そして臨床獣医師と共有し、さらに高い水準の検査、そしてより良いサービスの提供を目指していきたいと考えております。

高橋先生と會田先生

代表取締役 高橋 秀俊 先生

獣医師、医学博士(写真左)

検査業務部 部長 會田 浄 先生

臨床検査技師、医学博士(写真右)

その他のお客様導入事例

様々な医学及び法律的な事を元に、死因特定、親子鑑定といった事実関係の鑑定・解釈をする学問である法医学。高齢化や孤独死の増加など、死因究明を必要とする症例は年々増加する一方で、日本の法医解剖医は全国で約150人(インタビュー当時)と限られた人数で質の高い対応を求められる過酷な現状があります。

バーチャルスライドスキャナを使った組織検査のデジタル化が、なぜ孤立を解消することになるのか、また孤立化を解決した先にある法医学の未来とは何かについて、日本の法医学の第一人者である千葉大学大学院法医学教室 教授 岩瀬博太郎先生にお話いただきました。

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