ミニ分光器に入射した光は、グレーティングにより分光され、波長ごとに1次元の方向に並びます。この光がイメージセンサに入力され、光の入射位置ごとに出力される電気信号を読み込むことにより、波長情報を知ることができます。イメージセンサは、アレイ状の光電変換部とその出力電荷を外部へ転送する回路から構成されています。
ここまでの構成のタイプを分光器ヘッドタイプと呼んでいます。分光器ヘッドタイプに駆動回路・インターフェース回路などを装備しPCに接続できるようにしたものが分光器モジュールタイプです。
なお、分光器ヘッドタイプにはPCに接続するための評価用ボードを用意しています (別売)。
ミニ分光器のタイプに応じて、感度波長範囲や感度などの異なるリニアイメージセンサを組み込んでいます。
ミニ分光器 (例) | タイプ | イメージセンサ | 感度波長範囲 | 特長 |
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TGシリーズ(C9404CAなど) TMシリーズ(C10082CAなど) |
分光器 モジュール |
裏面入射型CCDイメージセンサ | 200 ~ 1100 nm | 高感度 |
TMシリーズ (C10082MDなど) |
分光器 モジュール |
CMOSイメージセンサ | 200 ~ 1100 nm | 広ダイナミックレンジ |
RCシリーズMSシリーズ マイクロ分光器 |
分光器ヘッド | CMOSイメージセンサ | 200 ~ 1100 nm | 広ダイナミックレンジ |
TGシリーズ (C11482GA) | 分光器 モジュール |
非冷却型InGaAsイメージセンサ | 900 ~ 1700 nm | 冷却用電源が不要 |
TGシリーズ(C9914GBなど) | 分光器 モジュール |
電子冷却型InGaAsイメージセンサ | 900 ~ 2550 nm | 低ノイズ |
蓄積時間とは、イメージセンサにおいて光によって発生した電荷を蓄積する時間のことです。蓄積される電荷量は蓄積時間に比例します。
したがって、入射光量が小さいときは、蓄積時間を大きくすることにより蓄積電荷量を大きくすることができます。
ただし、イメージセンサの暗出力も蓄積時間に比例するため注意が必要です。
蓄積時間は、1 μsまたは1 ms単位で設定できます (分光器ヘッドタイプでは、イメージセンサの駆動信号のタイミングにより蓄積時間を設定します)。
分光器モジュールタイプは、USBインターフェースを搭載しており、付属のUSBケーブルでWindows搭載のPCに接続して使用します。 ミニ分光器の種類によって、USBバスパワーのみで動作する製品と、外部電源が必要な製品があります。外部電源が必要な製品については、付属の電源コネクタを使用してください。
USBバスパワーのみ | C10082MD, C10083MD, C11697MB, C11482GA, C11007MA, C11008MA, C13053MA |
---|---|
USBバスパワー + 外部電源 | C10082CA, C10082CAH, C10083CA,C10083CAH, C9404CA, C9404CAH, C9913GC, C9914GB, C11118GA |
注1) 分光器ヘッドタイプについては、装置への組み込み条件に合わせた駆動回路をユーザ側で用意してください。なお、特性を簡易的に評価するための評価回路を用意しています (別売)。
注2) USBバスパワーについての注意事項
USBバスパワーは消費電流に上限があります。接続したポートから電源供給を受けるバスパワータイプのハブを介して使用する場合や、他のバスパワーUSB機器と併用したり複数台のミニ分光器を接続する場合には注意が必要です。PCの機種によっては (特にノートPC)、PCの設定により省電力モードに移行した際にUSBバスパワーの電源供給を停止する場合があります。
また省電力モードから復帰したとき、ミニ分光器との通信に不都合を生じる可能性があります。省電力モードの設定を無効にしてください。
ミニ分光器には、評価用ソフトウェアが付属されています (分光器ヘッドタイプを除く)。
評価用ソフトウェアには基本的な測定を行うための機能 (測定条件の設定、データの取得および保存、グラフ表示など)が組み込まれています。
付属の評価用ソフトウェアは以下のシステムでの動作が確認されています。なお、その他の環境における動作については保証いたしかねます。
OS | Microsoft Windows 7 Ultimate SP1 (32/64-bit) |
---|---|
モニタ | XGA (1024 × 768)以上 |
CPUおよびメモリなどについて高い性能を備えたPCを使用することを推奨します。
評価用ソフトウェアによって測定結果をCSVファイルとして保存して(選択ボタンで波長、PIXELの選択が可能)、このファイルを別のソフトウェアで読み込んで加工することができます。また、Visual C++、Visual Basicなどで使用可能なDLLを付属しており、ユーザ独自の測定プログラムを開発することも可能です。
ただし分光器ヘッドタイプの評価回路についてのDLL関数仕様は非公開です。
イメージセンサの各画素と波長軸との関係は、以下に示す5次の近似式を用いて算出することが可能です。
波長 [nm] = a0 + a1pix1 + a2pix2 + a3pix3 + a4pix4 + a5pix5
a0~a5: 検査成績書に記載された波長換算係数
ミニ分光器内部にも記憶されています (分光器ヘッドタイプを除く)。
pix: イメージセンサの任意の画素No. (1~)
評価用ソフトウェアでは、この係数を使用して波長に変換したデータを表示することも可能です。
なお、近似式により算出された値は、輝線などの既知の波長と比較する場合、若干の差を生じる場合があります。
A/D変換値を光量に変換する係数は装備していないため、変換することはできません。
評価用ソフトウェアをインストールすると、取扱説明書と技術資料もPCに保存されます。
Windowsのスタートメニューから
[プログラム]→[Hamamatsuminispectrometer]→[Document]
を選択すると見ることができます。
以下の光ファイバを用意しています (別売)。
・A16962-01: UV/VIS用、コア径 600 μm、1.5 m、両端SMA905Dコネクタ付き
・A16962-02: UV/VIS用、コア径 800 μm、1.5 m、両端SMA905Dコネクタ付き
・A16963-01: VIS/NIR用、コア径 600 μm、1.5 m、両端SMA905Dコネクタ付き
・A16963-02: VIS/NIR用、コア径 800 μm、1.5 m、両端SMA905Dコネクタ付き
注) MSシリーズ、マイクロ分光器は空間入射の測定光を入射するため、光ファイバは必要ありません。
当社のミニ分光器は可動部分がないため、優れた安定性をもっています。室内などの通常環境下で使用する場合には、波長校正は必要ないと考えます。出荷時に添付する波長変換係数を継続して使用することができます。 なお、波長精度の確認は、既知のスペクトルをもつ輝線ランプを用いて行うことができます。波長換算係数を再取得する場合には、高精度なモノクロメータなどを用いて校正をすることを推奨します。
透過型グレーティングまたは反射型グレーティングを内蔵しています。
ミニ分光器におけるスリットサイズは、分解能とスループットなどに関係します。スリットサイズ、特に幅方向のスリットサイズが小さいほど分解能は向上します。
しかし、スリットサイズを小さくするということは測定する光量が減少することにつながります。
したがって、スリットサイズを小さくすると装置のスループットが低下します。 ミニ分光器のスリットサイズは、この両者を考慮して設定されています。
ミニ分光器 (光ファイバ接続用)にはSMAコネクタが付いています。FCコネクタタイプの光ファイバを接続することはできません。 注) MSシリーズ、マイクロ分光器は空間入射で測定光を入射するため、光ファイバは必要ありません。
SMAコネクタ付き、NA 0.22でコア径の大きな光ファイバ (コア径500 m以上を推奨)を使用してください。コア径の小さな光ファイバを用いると測定精度に影響を与えることがあります。また、ノイズを低減するため、外来光の影響を受けない被覆の施された光ファイバを選択してください。なお紫外光を測定する場合には、ファイバの失透を防止するために耐ソラリゼーションの光ファイバを選択してください。
波長分解能の定義には2種類があります。1つはDIN規格におけるレイリー基準による分解能です。ピーク値における同一の強度の波長差がどこまで近接して識別できるかが、数字によって定義されます。この場合2つのピークの間の谷の部分は、ピーク値の少なくとも81%以下にて観測されなければなりません。
一方、より実践的な分解能の定義としてはスペクトルの半値幅 (FWHM)に基づく定義が広く知られています。これはスペクトルのピーク値に対する50%強度の部分におけるスペクトルの広がりを直接定義する方法です。 半値幅の定義による分解能は、レイリー基準による分解能の定義に対しておよそ80%の値になることが知られています。ミニ分光器の分解能は、半値幅によって定義されています。
ミニ分光器は機械的可動部分がないため、光学的精度が維持されやすく、高い波長再現性をもっています。たとえばC9406GCは、±0.2 nmの波長再現性を実現しています。波長の温度依存性については、TGシリーズ、TMシリーズはコンパクトかつ堅牢な光学系を採用することにより、温度による影響を極力抑えています。その結果、±0.02 nm/℃という仕様を実現しています。
迷光の定義には2つの方法があります。1つはロングパスフィルタを利用する方法で、白色光を特定の波長用のロングパスフィルタに透過させた光を測定光として用います。この場合の迷光は、透過波長域とブロック波長域の透過率の比で定義されます。この定義では、広い波長域での迷光の影響が測定できるため、蛍光測定などの実際の用途に即した評価方法といえます。ただし、参照光として用いる白色光の強度プロファイルが、測定値に影響を与えることを認識する必要があります。もう1つの方法は、モノクロメータ出射光や輝線ランプのスペクトルなど、波長範囲の狭い参照光を用いる方法です。この場合の迷光の定義の一例として、狭い波長範囲の参照光のピーク波長から、ずれた位置において出力される不必要な光量と、参照光の光量を用いた、以下の式を示します。狭い波長範囲の参照光による迷光を評価する場合、測定条件が非常に単純なため、装置の定量的な評価の再現性は高くなります。
SL=10 × (log IM / IR)
SL: 波長範囲の狭い参照光を用いる方法による迷光
IM: 参照光のピーク波長から、ずれた位置において出力される不必要な光量
IR: 参照光の光量
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