2020年8月、当社は気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related financial Disclosures)による提言への賛同を表明し、気候変動が当社グループの事業に与えるリスクや機会、財務的影響への分析を推進しました。TCFD提言に基づいた検討結果の一部を開示いたします。
当社は浜松ホトニクスグループサステナビリティ基本方針、浜松ホトニクスグループ環境方針に基づき、気候変動関連へのリスク・機会や取り組みを重要事項と認識しています。執行役員を委員長とする環境委員会、ならびにその配下の環境専門部会、ワーキンググループにて進捗状況や検討したマテリアリティへの対応を、サステナビリティ事務局(経営企画統括本部)にて精査しております。重要事項は執行役員会、取締役会にて報告のうえ、監督を受けて、指摘事項を全社に展開するPDCAを構築しています。
浜松ホトニクスグループサステナビリティ基本方針、推進体制:
https://www.hamamatsu.com/jp/ja/our-company/sustainability/approach-to-sustainability.html
浜松ホトニクスグループ環境方針:
https://www.hamamatsu.com/jp/ja/our-company/sustainability/environment/environmental-management.html
当社は、気候変動による様々な変化が、当社の事業に影響を及ぼすと認識しています。その中でも特に重要なリスク・機会を特定するため、事業全体を対象に、1.5/2℃、4℃でのシナリオ分析を下記ステップで実施しました。
現在および将来に想定される当社が直面する気候変動リスクと機会を抽出しました。当社のステークホルダーの関心や将来の重要性を精査しました。その結果、16項目の移行及び物理リスク、並びに機会を確認しました。
影響度 | リスク | 機会 | |
---|---|---|---|
移行 | 物理 | ||
大 | #1 炭素税/排出権取引制度の導入による運用コストの増加 #2 開示要件・規制強化による負担・罰金リスクの増大 #3 顧客からの評判低下・売上減少・競争力低下 #4 再エネ導入・省エネ推進による短期的な運営コストの増加 #5 原材料に対する規制強化 |
#6 風水害の激甚化による業務停止リスクの増大・売上高の減少 #7 風水害の激甚化による損害の増加 #8 平均気温の上昇による空調・冷却コストの増大 #9 平均気温の上昇による従業員の出社不可に伴う事業停止リスクの増大・売上高の減少 #10 風水害の激甚化による従業員の出社不可に伴う事業停止リスクの増大・売上高の減少 |
#11 気候変動対応に資する製品・サービスの提供による売上高の増加 #12 新規市場への参入による収益増 #13 顧客・投資家の評判の獲得による費用の減少 #14 再エネ導入・省エネ推進による収益増 #15 災害レジリエンス強化による長期的な売上高の増加・費用の減少 |
中 ~ 小 |
#16 投資家からの評判低下・競争力低下 | ・取水先水源における降雨量の減少に伴う生産量の減少により生じる売上高の減少 |
2030年時点での1.5/2℃、4℃シナリオを設定し、気候変動への適応と低炭素社会への移行について、外部環境とステークホルダーの変化を考察しました。また、それに伴って発生の可能性がある当社顧客セクターの変化を予測し、当社事業への影響度を検討しました。
各シナリオが当社の戦略的・財務的ポジションに対して与えうる影響を評価するため、感度分析を行いました。気候変動リスク、機会のうち、重要度の高い項目について、それぞれにおいて事業インパクト算定方法を検討し、利用可能な社内外のパラメーターから算出し、検討しました。(一例)
種類 | 事業へのインパクト(2030年) | 財務上の潜在的影響 | ||
---|---|---|---|---|
1.5/2℃ | 4℃ | |||
リスク | 移行 | 製品競争力が低下し、顧客からの評価低迷による売上減少 | 大 | - |
再生可能エネルギーの導入、省エネルギー推進による短期的な運営コストの増加 | 中 | - | ||
物理 | 風水害の激甚化による事業停止(生産拠点、物流、在庫、サプライチェーン)、売上減少 | 中 | 大 | |
風水害の激甚化による製造拠点の損壊と復旧費用の増加 | 中 | 大 | ||
機会 | 医用・バイオ機器:検体検査機器向け関連製品の売上増加 | 中 | 中 | |
産業用機器:EVバッテリー検査装置向け関連製品の売上増加 | 中 | 中 | ||
分析機器:環境分析向け関連製品の売上増加 | 中 | 小 |
事業インパクト評価結果に基づき、影響が大きな内容に対して対応策を実施しています。環境委員会、ならびにその配下の環境専門部会、ワーキンググループや関係者にてリスクや機会のテーマに応じたプロジェクトを立ち上げ、対応策を検討しています。
対象 | 概要 | 対応策 |
---|---|---|
Scope1※1 | 燃料使用機器・設備の転換 |
|
カーボンオフセット |
|
|
Scope2※2 | エネルギー使用量削減 |
|
再生可能エネルギー導入 |
|
|
カーボンオフセット |
|
|
Scope3※3 | カテゴリ1削減 |
|
カテゴリ11削減 |
|
※1 Scope1: 燃料、都市ガス等の使用に伴う直接排出
※2 Scope2: 購入電力等の使用に伴う間接排出
※3 Scope3: 当社グループのバリューチェーン(原材料調達・物流・販売・廃棄など)で発生するその他の間接排出
当社は環境管理規定を定め、全社的な環境マネジメントシステムを運用しています。環境委員会、環境専門部会では3か月に一度、気候変動に関連したリスクの識別およびツールなどを用いた定期的な評価を実施しています。対応すべきリスクとして評価された項目は環境マネジメントシステムにて、期ごとに定める環境目標と活動計画に設定しています。
リスク対応活動は環境委員会にて経営層が進捗や課題をレビューしており、継続的改善により環境パフォーマンスの向上に努めています。
連結子会社を含めたグループ全体でのリスク管理は年一回開催されるグループESG会議において実施しています。また連結子会社におけるリスク対応活動等は3か月ごとに進捗を環境委員会事務局に報告が行われ、グループ全体でのリスク管理を進めています。
浜松ホトニクスは2020年3月、地球温暖化対策に係る長期ビジョンを策定し「104期(2051年9月期)にGHG(Scope1+2)を71期比83 %以上削減する」という目標を定めて活動してきました。この度、SBT認定や対象範囲の変更等を反映し、浜松ホトニクスグループの長期ビジョンを「2050年カーボンニュートラル達成」という新しい目標に見直しを行いました。今後も事業活動から排出されるGHGの削減に向けてグループで取り組んでまいります。
当社グループのGHG削減目標は、パリ協定が目指す「世界的な平均気温上昇を産業革命前に比べて、「2℃を十分に下回る水準に抑える」科学的な根拠に基づいた目標(SBT)であると認定されております。
Scope1+2 | ・84期(2031年9月期)にGHG排出量を72期(2019年9月期)比で30 %削減する |
---|---|
Scope3 | ・カテゴリ11:販売した製品・サービスの使用による排出量を84期(2031年9月期)までに15 %削減する ・カテゴリ1 :購入した製品・サービスによる排出量の76 %を占める主要サプライヤーに対し、79期(2026年9月期)までに科学に基づく削減目標の設定の要請・共有を推進する |
当社は、再生可能エネルギー100 %での事業運営を目指す国際イニシアティブ「RE100」に2022年10月3日に加盟しました。国内外グループにおける事業活動で使用する電力を、2040年までに再生可能エネルギー100 %とすることを目指します。
76期のCO2排出量は再生可能エネルギーの導入等により、72期比で85.7 %削減し、大幅なGHG排出量の削減を実現しました。今後も対応策に沿ってGHG排出量削減を進めていきます。
※算定範囲:浜松ホトニクス株式会社、国内連結会社、海外連結会社(製造拠点)
バリューチェーン※4全体での環境負荷を把握するために、当社ではGHG算定基準である「GHGプロトコル」に基づき、Scope1、Scope2に加えて、Scope3の算定にも取り組んでいます。
※4:製品の部材調達、製造、物流、使用、廃棄等の一連のプロセス。自社のサプライチェーンの上流と下流を含む。
※ 算定範囲:浜松ホトニクス株式会社、国内連結会社、海外連結会社(製造拠点)
カテゴリ | 74期排出量 | 75期排出量 | 76期排出量 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
排出量(t-CO2) | 割合(%) | 排出量(t-CO2) | 割合(%) | 排出量(t-CO2) | 割合(%) | |
Scope1(直接排出:燃料の使用等) | 12,599 | 2.1 | 11,233 | 1.5 | 7,130 | 1.0 |
Scope2(間接排出:購入電力の使用) | 46,638 | 7.7 | 46,271 | 6.2 | 1,840 | 0.3 |
Scope3(その他間接排出) | 542,845 | 90.2 | 685,923 | 92.3 | 707,115 | 98.7 |
1.購入した物品・サービス |
356,721 | (65.7) | 408,044 | (59.5) | 404,124 | (57.2) |
2.資本財 |
53,214 | (9.8) | 98,641 | (14.4) | 145,335 | (20.6) |
3. Scope1・2に含まれない燃料及びエネルギー活動 |
11,361 | (2.1) | 10,811 | (1.6) | 1,484 | (0.2) |
4.輸送、配送(上流) |
11,167 | (2.1) | 17,747 | (2.6) | 15,892 | (2.2) |
5.事業から出る廃棄物 |
489 | (0.1) | 486 | (0.1) | 417 | (0.1) |
6.出張 |
183 | (0.0) | 754 | (0.1) | 2,659 | (0.4) |
7.従業員の通勤 |
5,812 | (1.1) | 5,995 | (0.9) | 6,091 | (0.90) |
8.リース資産(上流) |
― | ― | ― | ― | ― | ― |
9.輸送、配送(下流) |
― | ― | ― | ― | ― | ― |
10.販売した製品の加工 |
5,464 | (1.0) | 7,176 | (1.1) | 6,709 | (0.9) |
11.販売した製品の使用 |
98,088 | (18.1) | 135,912 | (19.8) | 124,392 | (17.6) |
12.販売した製品の廃棄 |
344 | (0.1) | 358 | (0.1) | 12 | (0.0) |
13.リース資産(下流) |
― | ― | ― | ― | ― | ― |
14.フランチャイズ |
― | ― | ― | ― | ― | ― |
15.投資 |
― | ― | ― | ― | ― | ― |
※5 括弧内の数値はScope3に対する割合
<Scope3の算定方法>
カテゴリ | 活動量 | 原単位 |
---|---|---|
1.購入した物品・サービス | 原材料・部品の購入金額 | 購入金額あたり排出原単位 |
2.資本財 | 資本財の購入金額 | 購入金額あたり排出原単位 |
3.Scope1・2に含まれない燃料及びエネルギー活動 | 燃料、電気、熱のエネルギー使用量 | エネルギー使用量あたり排出原単位 |
4.輸送、配送(上流) | ・購入した製品サービスに関する輸送量 ・販売した製品の輸送金額 |
・排出原単位(改良トンキロ法) ・輸送手段別排出原単位 |
5.事業から出る廃棄物 | 廃棄物種類別排出量 | 廃棄物種類別原単位 |
6.出張 | ・移動距離 ・交通費支給額 |
移動手段別排出原単位 |
7.従業員の通勤 | ・移動距離 ・交通費支給額 |
通勤手段別排出原単位 |
8.リース資産(上流) | 非該当 | ─ |
9.輸送、配送(下流) | 非該当 | ─ |
10.販売した製品の加工 | 製品の販売額 | 分野別代表製造排出原単位 |
11.販売した製品の使用 | 最終製品の出荷数、消費電力、耐用年数 | 電気事業者別CO2排出係数 代替値(環境省) |
12.販売した製品の廃棄 | 最終製品の出荷数、製品重量 | 種類別排出量原単位 |
13.リース資産(下流) | 非該当 | ─ |
14.フランチャイズ | 非該当 | ─ |
15.投資 | 非該当 | ─ |
カーボンニュートラルの実現に向けた具体的な方策の一つとして、2022年10月より、国内拠点※6における購入電力のすべて(年間約124 GWh)を再生可能エネルギー※7に転換しています。その結果、二酸化炭素およそ年間5.5 万トンの削減効果を生み出しました。また、海外現地法人においても、自己消費型太陽光発電設備(発電容量総計:約1.1 MW)や、グリーン電力証書の導入を計画しており、今後もグループ全体での対応を推進してまいります。
※ 算定範囲:浜松ホトニクス株式会社および連結子会社
75期 (2022年9月期) | 14.6 % |
---|---|
76期 (2023年9月期) | 96.3 % |
※6:本社工場、三家工場、新貝工場、豊岡製作所、天王製作所、常光製作所、都田製作所、中央研究所、産業開発研究センター、東京営業所、グループ会社(連結子会社:光素、高丘電子、浜松電子プレス、持分法適用関連会社:浜松光電)
※7:中部電力ミライズ(株)様によるCO2フリー電力を全量採用
太陽光発電設備 (豊岡製作所)
太陽光発電設備 (新貝工場)
風力・太陽光ハイブリッド外灯 (中央研究所)
太陽光発電設備 (本社工場)
半導体製造プロセスにおいて必要不可欠なHFC、PFC、SF6、NF3などのGHGは、地球温暖化への影響が大きく、CO2の約2万倍もの地球温暖化係数(GWP)を有するものもあります。当社ではGHG(PFC、SF6)除害装置の積極的な導入、プロセスの最適化などにより、排出量削減に取り組んでいます。
除去装置
当社が算定したGHG排出量データ(Scope1・2・3)について、透明性・信頼性の高い情報を提供・公開するため、SGSジャパン株式会社による第三者検証を受審し、検証意見書を取得しました。今後もデータの信頼性とGHG排出量の継続的な改善に努めてまいります。
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