遺伝子解析 遺伝子解析

遺伝子解析

DNAと遺伝子

DNAはデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)の略で、ヒトの遺伝情報などを構成する物質です。DNAの中にはA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類の塩基があり、この組み合わせ(塩基配列)の違いが人々の姿形や性格、体質などさまざまな違いを生み出しています。

このDNAは精子や卵子の中にも存在し、親の特徴が子供に引き継がれることを「遺伝」といいます。また、この遺伝を決める因子のことを「遺伝子」といいます。遺伝子はDNAの特定の領域にある、生物の形質を決める役割を果たす配列のことを指します。DNAは塩基配列を構成する物質のことを指すのに対し、遺伝子はその一部の機能的な配列を指しています。

一方で「ゲノム」とは、その生物が持っているDNAの全ての塩基配列のことを指し、遺伝子だけでなく様々な機能的配列が含まれています。ヒトのゲノムは約30億の塩基対で構成されており、現在では全塩基配列が解読されています。

DNAと遺伝子

遺伝子解析とは

遺伝子解析とはDNAの塩基配列の解読や、細胞や組織において特定の遺伝子がどの程度発現しているかを調べることを指します。特定の疾患に関わる遺伝子変異の有無を調べ、将来の発症リスクの予測や、個人の遺伝的な体質の傾向を評価することが可能です。また、体内においてウイルスの目印となる遺伝子配列を検出することで感染症の検査を行うこともできます。

遺伝子解析は現代医療にとって極めて重要な役割を果たしています。例えば、がんや希少疾患などさまざまな病気の原因となる遺伝子変異を特定することで、適切な診断や治療法の選択が可能になります。また、治療前に遺伝子を検査することで、個人の体質にあった効果が高く副作用が少ない薬を提供することができ、個別化医療への貢献が期待されています。

さらに、持って生まれた体質や、なりやすい病気の傾向を知ることで予防に役立てることができます。

遺伝子解析とは

遺伝子解析に用いられる手法

遺伝子解析では、遺伝子を増やす、定量する、配列を解読することで解析が行われます。このためには以下のような手法が用いられます。

浜松ホトニクスは遺伝子解析に用いられる装置向けに高感度な検出器を各種ラインアップしています。

qPCR(quantitative polymerase chain reaction)

qPCRは、「リアルタイムPCR」とも呼ばれ、PCRによる増幅過程を リアルタイムにモニタリングすることで、標的遺伝子の発現量を定量的に測定する手法です。

①:qPCRの遺伝子発現量測定にはいくつかの手法があります。例えばインターカレーター法では、標的遺伝子に特異的なプライマー、dNTP、およびDNAと結合する蛍光色素を準備します。

②:蛍光色素はPCR反応によって増幅した二本鎖DNAと結合し、強い蛍光を発します。

③:蛍光強度は、PCRサイクルが進み、DNAの量が増えるにつれて指数関数的に増加します。

④:蛍光強度が一定の閾値に達するサイクル数を基にして初期の遺伝子量を推定することができます。

qPCRは特定の遺伝子に焦点を当てた解析を比較的簡易且つ低コストで行うことができ、病原体の検出やSNP解析等が可能です。

qPCRの測定の流れ

図1:qPCRの測定の流れ

おすすめ製品

高感度かつ低ノイズな特性により、微弱な蛍光を正確に読み取ることが可能です。

コンパクトな設計で装置組み込みが容易なボードタイプのCMOSカメラです。高感度で高解像度なカメラ特性により、微弱な蛍光を正確かつ高速に読み取ることが可能です。

感度波長範囲340 nm~850 nmに対応した、高感度・超小型の分光器ヘッドです。装置の小型化に貢献します。

Siフォトダイオード、励起用LED、光学系、回路から構成された蛍光検出用の光学モジュールです。

デジタルPCR

デジタルPCRは、遺伝子発現の絶対量を取得できる測定手法です。

①、②:核酸サンプルと反応液を混合したものを複数の微細なウエルに分配します。

③:各ウエルで独立したPCR反応を行います。

④:標的遺伝子が存在するウエルではDNAが増幅され、蛍光シグナルを発します。増幅したウエル、増幅しなかったウエルがあたかも0/1のデジタルデータのようにはっきり分かれるため、それをカウントすることで元のサンプル中の標的遺伝子のコピー数を高精度で定量することが可能です。

デジタルPCRでは、標的遺伝子の絶対量を高精度に定量するため、非常に高感度な検出器が必要となります。

デジタルPCRの測定の流れ

図2:デジタルPCRの測定の流れ

おすすめ製品

広ダイナミックレンジタイプのMPPCを内蔵した微弱光検出が可能な光計測モジュールです。

広ダイナミックレンジタイプのMPPCを内蔵した微弱光検出が可能な光計測モジュールです。フレキシブルケーブル付きのため、MPPCの配置が容易です。

DNAマイクロアレイ

DNAマイクロアレイとは、ガラスやシリコン等の基板上に、数万から数十万の異なる短い一本鎖DNA断片(DNAプローブ)を高密度に固定化したチップのことです。マイクロアレイ法では、細胞や組織における遺伝子発現の網羅的な解析を行うことができます。

まず試料から抽出したmRNAを鋳型にして逆転写酵素によりcDNAを合成し、蛍光色素で標識します。その後、標識したcDNAをマイクロアレイ上に添加すると、DNAマイクロアレイ上の相補的な配列と結合(ハイブリダイゼーション)します。最後に結合していないcDNAを洗浄除去し、各スポットの蛍光強度を測定することで、発現量を解析します。

DNAマイクロアレイの測定の流れ

図3:DNAマイクロアレイの測定の流れ

おすすめ製品

高感度かつ低ノイズな特性により、DNAの蛍光を正確に読み取ることが可能です。

大面積で高速、かつ高感度なカメラ特性により、広視野にわたる微弱な蛍光を正確かつ高速に読み取ることが可能です。

コンパクトな設計で装置組み込みが容易なボードタイプのCMOSカメラです。高感度で高解像度なカメラ特性により、微弱な蛍光を正確かつ高速に読み取ることが可能です。

サンガーシーケンシング

サンガーシーケンシングはサンガー法を用いてDNAの塩基配列を解析するシーケンス手法です。サンガー法は、1977年にFrederick Sangerらによって開発され、長年にわたり遺伝子解析の標準的な手段として広く利用されてきました。

サンガー法の流れは、まずPCRで標的DNAを増幅した後、鋳型となるDNA鎖を調製します。次にdNTPと、蛍光標識されたddNTPを加えて伸長反応を行います。ddNTPが取り込まれた位置で伸長反応が停止するため、さまざまな長さの断片ができあがります。これらの断片を電気泳動で長さ順に分離し、各断片の最終塩基に由来する蛍光波長を検出することで配列を決定します。1回の反応で800~1000塩基程度の配列を高精度で読むことができます。

サンガーシーケンシングの測定の流れ

図4:サンガーシーケンシングの測定の流れ

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高感度かつ低ノイズな特性により、微弱な蛍光を正確に読み取ることが可能です。

光電子増倍管モジュールと組み合わせて使用する光学ブロックです。各種ミラーやフィルタなどを用いた光学系の構築を容易にします。

次世代シーケンシング

次世代シーケンシングは、DNAの塩基配列を高速かつ大量に読み取ることができる次世代シーケンサを用いた解析手法です。従来のサンガー法が1回の反応で数百から数千塩基対の配列しか読めなかったのに対し、次世代シーケンサは1度に数十億から数百億の短い配列断片(リード)を同時に解読できます。このため、ゲノム全体の配列を効率的に解析することが可能になりました。

第2世代の次世代シーケンサは、一般的にDNAクラスターの合成と蛍光シグナルの検出という原理に基づいています。

①:まず塩基配列を決定したいDNAを小さな断片に切り分け、各DNA断片の両端にアダプターを結合させます。

②:これらのアダプターを介してDNA断片を基盤やビーズ上に固定し、局所的にDNAを増幅させてクラスターを形成します。

③、④:クラスターを形成したDNA断片に対して蛍光標識された4種類の修飾ヌクレオチドを用いて伸長反応を行いながら、蛍光をカメラ等の検出器で検出します。

このサイクルを何度も行うことで多数の塩基配列を短時間で読み取ることが可能になります。

次世代シーケンシングの測定の流れ

図5:次世代シーケンシングの測定の流れ

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TDI(Time Delay Integrasion)技術により、広範囲の高速スキャンを可能にするカメラです。積算段数の多さにより高感度なイメージングを実現することで、微弱な蛍光を正確に読み取ることが可能です。

コンパクトな設計で装置組み込みが容易なボード型TDIカメラです。TDI(Time Delay Integrasion)技術により、広範囲の高速スキャンを可能にするカメラです。積算段数の多さにより高感度なイメージングを実現することで、微弱な蛍光を正確に読み取ることが可能です。

大面積で高速、かつ高感度なカメラ特性により、広視野にわたる微弱な蛍光を正確かつ高速に読み取ることが可能です。

コンパクトな設計で装置組み込みが容易なボードタイプのCMOSカメラです。高感度で高解像度なカメラ特性により、微弱な蛍光を正確かつ高速に読み取ることが可能です。

FISH(Fluorescence in situ Hybridization)

FISHは、蛍光物質によって標識されたプローブを標的遺伝子と結合させることで、細胞や組織切片上で標的遺伝子の位置や発現を可視化する手法です。

①:標的遺伝子に相補的な塩基配列を持つ蛍光標識されたプローブを用意します。

②:組織切片や細胞の固定・透過処理を行った後、高温でDNAを一本鎖化させます。

③:プローブと目的DNAおよびRNAのハイブリダイズ(結合)が促進されます。

④:ハイブリダイゼーション後、余分なプローブを洗浄し、蛍光顕微鏡で観察します。標的遺伝子が存在する細胞は、プローブが結合することにより特定の蛍光シグナルが検出されます。

FISHの測定の流れ

図6:FISHの測定の流れ

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高感度かつ広視野、高解像度なカメラ特性により、微弱な蛍光を正確かつ高速・広視野で読み取ることが可能です。

コンパクトな設計で装置組み込みが容易なボードタイプのCMOSカメラです。高感度で高解像度なカメラ特性により、微弱な蛍光を正確かつ高速に読み取ることが可能です。

Topics:空間生物学(Spatial Biology)

近年、単離された細胞やバルク状態での遺伝子解析に加えて、空間的な情報を組み込んだ空間生物学が注目されています。

空間生物学では、遺伝子やタンパク質などの発現を組織切片上で高感度に検出し、その空間マッピングデータを取得することが可能です。具体的には、がん組織の不均一性解析や発生過程の遺伝子発現プロファイリングなどさまざまな応用が期待されており、創薬分野や再生医療分野でも有用なツールとなることが見込まれています。

弊社の高感度カメラや高感度検出器は、空間オミクス解析装置にも幅広く採用されており、高品質な空間データの取得に貢献しています。

蛍光標識されたヒト肺がん組織切片画像

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可視から近赤外まで幅広い波長における蛍光観察に最適なsCMOSカメラです。高感度かつ広視野、高解像度なカメラ特性により、微弱な蛍光を正確かつ高速・広視野で読み取ることが可能です。

コンパクトな設計で装置組み込みが容易なボードタイプのCMOSカメラです。高感度で高解像度なカメラ特性により、微弱な蛍光を正確かつ高速に読み取ることが可能です。

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