フローサイトメータ

フローサイトメトリは、散乱光と蛍光の測定を通じて、さまざまな細胞情報を取得する技術です。その測定を行う装置をフローサイトメータと呼びます。

特異的抗体を用いた蛍光標識法により、細胞内外のマーカーを検出し、複数のパラメータ(細胞の種類、活性状態、細胞周期の状態など)に基づいて細胞集団を定量的に評価することができます。

構造イメージ

フローサイトメータは、大きく3つの要素に分けることができます。流路系、光学系、電気系と呼ばれ、それぞれが異なる役割を果たしています。

  • 流路系:細胞やシース液を流すチューブやガラスセルで構成され、細胞が流れる量や速度の正確性が求められます。
  • 光学系:細胞の励起用光源、細胞からの蛍光や散乱光を検出する検出器、レンズやフィルタなどから構成されます。高精度な細胞分析を実現するために、各デバイスには高い安定性や感度が求められます。
  • 電気系:光学系から出力された電気信号を受け取ってデータ処理を行い、測定結果の解析を行います。

基本原理

蛍光物質でラベリングされた細胞を、溶液と一緒に細い管の中に流すと、細胞はある間隔で管内を移動します。

これにレーザ光を照射して、蛍光物質から出る蛍光や、細胞により散乱される光を光検出器で観測します。

1. 測定対象となる細胞を蛍光標識

2. 細胞を流路系に流し込み、一定間隔で管内を移動

3. 細胞へレーザ光を照射

4. 光学系を介して光検出

技術トレンド:マルチカラー解析

これまで取得できなかった多くの情報を取得するには、細胞に対して複数種類のマーカーを用いて染色する必要があります。それら多様なマーカーの組合せを精密に区別する測定では、異なる波長のレーザや検出器を活用したマルチカラー解析が活躍しています。

さらに、従来の蛍光検出測定では、蛍光強度が高い波長範囲のみ測定しましたが、昨今の測定・分析技術では、スペクトル全体の蛍光情報を取得することができます。これにより、多色解析の精度が向上し、より高度な細胞解析が可能になっています。

蛍光の漏れ込みと補正(コンペンセーション)

マルチカラー解析では、複数の蛍光色素を用いて測定するため、蛍光波長が項目間で重複し、本来測定したいチャンネルではないチャンネルへ光が漏れ込む形で干渉する問題があります。これを補正する技術をコンペンセーションと呼びます。この補正では、測定する蛍光色素同士の蛍光の重なりを予め理解し、信号から差し引く処理を行う必要があります。処理の難易度には、フローサイトメータに搭載される検出器の感度特性も大きく関係します。

従来の測定波長イメージ

一度に測定できる項目の数が少ない代わりに、測定スペクトル同士の重複が少なく、シンプルな測定

マルチカラー解析における測定波長イメージ

一度に測定できる項目の数が多いため、測定スペクトル同士の重複が多く、複雑でシビアな測定

マルチカラー解析への対応

マルチカラー解析の発展によって、フローサイトメータに搭載される検出器にも多くの能力が求められるようになりました。

まず、多くの正確なデータを得るために、検出波長を近赤外領域にまで拡大することが求められています。また、それに伴い、近赤外領域での検出器の高感度化が必要とされています。これらの要望に対応するため、浜松ホトニクスでは検出器の高性能化に取り組んでいます。

例えば、光電子増倍管においては、光電面に結晶材料を用いた光電子増倍管モジュールの性能向上を進めており、従来のアルカリ材料を用いた光電子増倍管と比較し、近赤外感度の延長と高感度化を実現しています。

また、1台で複数の検出チャンネルを保有する光電子増倍管もラインアップしており、マルチカラー解析に適した機能を有するモジュールのご提案も可能です。

資料のご紹介

結晶光電面を有する高感度な光電子増倍管モジュールシリーズをまとめて紹介しています。

 

高感度光電子増倍管モジュール総合カタログ[1.4 MB/PDF]

光電子増倍管 量子効率比較

関連研究:3次元像フローサイトメータ技術

一般的に、無色透明である細胞を生きたまま観察(イメージング)することは非常に困難とされてきました。これは、観察しやすくするために染色などを行うと、細胞の活性が失われてしまうからです。非染色の細胞を可視化する技術として、光の位相を利用した位相差コントラスト法や微分干渉法がよく知られていますが、これらの方法では、細胞の定性的な形態情報しか得ることができませんでした。
この課題に対して、当社は光の位相差を利用した定量的な細胞の可視化技術である定量位相顕微鏡のほか、更に細胞を生きたまま高速に検出する技術の研究開発を進めてきました。その成果の一つとして、生きたままの細胞を連続的に流路に流しながら、非染色・非侵襲的に細胞の3次元断層像を得る方法を考案し、その原理確認を行いながら、研究開発を進めています。

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