か行

ガイガー放電

APDの逆電圧を降伏電圧以上にして動作させると、わずかな光の入射に対しても高電界によって放電現象が発生するようになります。この現象がガイガー放電です。

ガイガーモード

降伏電圧を超えた逆電圧でAPDを動作させること。ガイガーモードによってシングルフォトンの検出が可能になります。

開口率

画素面積に対する「配線部などを除いたフォトダイオードの面積」の比。

回折格子(グレーティング)

光の回折を利用してスペクトルを得る光学素子。一般的な反射型回折格子では面に多数の溝を刻み、その面で反射する光線による干渉で生ずる回折像を利用します。

開放端電圧

フォトダイオードの負荷抵抗が無限大のときの光起電圧。開放端電圧は光量に依存しますが、かなり弱い光以上ではほぼ一定の値となります。

活性化エネルギー

物質が反応するために必要なエネルギー。化学反応の速度を予想するアレニウスの式では、活性化エネルギーは反応のしやすさを表す指標として使われます。アレニウスの式は、LEDの寿命予測などに使用されます。LED劣化の活性化エネルギーは、複数の温度条件下における故障率から求められます。

擬似ランダムパターン

ビットエラーレートやアイパターンの測定の際に用いられる、不規則な信号にみえる符号列 (真に不規則ではありません)。通常使われる擬似ランダムパターンは、0と1の発生の確率が等しく、シフトレジスタとフィードバックを用いた回路によって比較的簡単に生成できます。

許容損失

パッケージやチップの耐熱温度から算出される、許容できる電力消費量。多くの場合、素子に含まれる熱的に弱い部品によって決定されます。ディレーティング (減定格)と呼ばれる係数を用いて、実際に使用する温度における許容損失の絶対最大定格を換算できます。たとえば、500 mWという許容損失が25 °Cにおける絶対最大定格として定義され、5 mW/°Cのディレーティングである場合、85 °Cにおける絶対最大定格は500 mW - 5 mW/°C x (85 °C - 25 °C) = 200 mWとなります。

空間解像度

イメージセンサが、被写体を忠実にとらえることができる解像度。イメージセンサの解像度を評価するためには、MTF (modulation transfer function)が使われます。MTFは、正弦波の輝度分布をもった被写体を撮像するときに、正弦波の輝度のコントラストが空間周波数により変化する状態を示します。空間周波数は、正弦波が単位長当たりで繰り返される回数です。CCDの画素は個別に分離しているため、離散サンプリング定理に従ってナイキスト (Nyquist)限界によって決まる限界解像度があります。白黒のパターンが入力された場合に、パターンが細かくなるに従って信号の白レベルと黒レベルの差が小さくなり、最終的には解像できなくなります。CCDの理想的なMTFは、sinc* {(π x f )/(2 x fn)}で表されます (f: 空間周波数、fn: 空間ナイキスト周波数)。しかし光学的な正弦波を実現することは難しいため、一般的には矩形波のパターンをもったテストチャートが代用されます。この場合の空間周波数特性をCTF (contrast transfer function)と呼びます。
* sinc: 理想的な矩形関数のフーリエ変換

空間電荷効果

受光素子に入射していた光が遮断されると、空乏層内のキャリア分布が崩れ、電極に引き寄せられるキャリアによって空乏層には印加バイアスと逆向きの電界が発生します。この現象を空間電荷効果といい、光が強いときに応答特性 (立ち下がり)を劣化させる場合があります。

クエンチング

消光、焼入れ (急冷)という意味を表す言葉。ガイガーモードAPDの場合では、逆電圧が降伏電圧以下になり、ガイガー放電が停止することを表します。

クロストーク

ある素子に入射した光信号によって、隣接する素子に電気信号が漏れてしまう現象。MPPCの場合、APDピクセルにおいて、入射フォトンで励起されたキャリアがアバランシェ増幅する過程でフォトンが発生することがあります。このフォトンがほかのAPDピクセルで検出された場合、MPPCの出力は実際にMPPCに入射し検出されたフォトン数よりも高い値を示します。この現象がMPPCのクロストークの原因の1つと考えられます。

群遅延特性

入力波形に対する出力波形の時間の遅れを示す特性。位相特性を周波数で微分することによって求めることができます。位相特性が線形であれば群遅延はある一定の値となり、信号を歪ませることなく伝達することができます。

蛍光紙

シンチレータを紙状にしたもの。一般にはサポート基板にシンチレータを堆積させ、その上を保護膜で覆います。

ゲイン帯域幅積(GB積)

ゲインと帯域幅の積で、増幅素子の特性を示す数値の1つ。

検出効率: PDE(photon detection efficiency)

入射したフォトンのうち何%を検出できるかを示す特性。MPPCの場合、検出効率は以下の式で表されます。励起確率は、逆電圧が高い場合に大きな値となります。$$PDE=QE \cdot fg \cdot Pa$$   QE: 量子効率
  fg: 開口率
  Pa: 励起確率

光起電力素子

半導体のPN接合部に光を照射すると電流や電圧を発生する受光素子で、外部からの電源供給なしでも使用可能です。Si・InGaAs・GaAsP・GaAs・InAs・InSbなどがあります。

格子定数

結晶においては、原子が規則正しく配列し結晶格子を形成しています。格子定数は、結晶格子の最小単位である単位格子の大きさを規定する量です。

光電効果

物質が光を吸収して自由電子を生ずる現象。

光導電素子

光が入射すると導電率が大きくなる受光素子で、外部から電源を供給して使用します。MCT (HgCdTe)・PbS・PbSeなどがあります。

降伏電圧

PN接合に逆電圧を印加していくと、ある電圧で急激に逆電流が増加する現象がみられます。このときの電圧を降伏電圧と呼びます。当社のSi APDでは、便宜的に逆電流が100 μAとなる電圧を降伏電圧としています。

コンプトン散乱

X線・γ線などが粒子 (電子など)に衝突するときにエネルギーの一部を失う形で散乱する現象。この現象はX線などの粒子性を示すものとして知られています。