ライトシート顕微鏡 ライトシート顕微鏡

ライトシート顕微鏡

ライトシート顕微鏡とは

ライトシート顕微鏡とは、サンプルにシート状に成形した照明光を当て2次元の画像を取得する観察手法です。シート光を当てる位置を変えながら撮影することで3次元のイメージングも可能になります。

ライトシート顕微鏡は3次元の画像を取得できるため、しばしば共焦点顕微鏡と比較されます。ライトシート顕微鏡の大きな特長は以下の2点です。

  • 励起光照明用の光路と蛍光検出用の光路が分かれていること。
  • 焦点面の上下に励起光が当たらないこと。

 

共焦点顕微鏡は落射照明のため、焦点面の垂直方向から励起光を当てることで、焦点面の上下にも励起光が当たりサンプルの褪色が進んでしまったりサンプルに光毒性を与えたりしてしまいます。一方、ライトシート顕微鏡はサンプルの焦点面と平行に励起光を照射するため、焦点面の上下には励起光があたらず、サンプルの褪色や光毒性を低減できるというメリットがあります。(図1)

また、共焦点顕微鏡ではXY方向にスキャンを行いながら撮影する必要があるのに対し、ライトシート顕微鏡はXY平面を一度に照明するためスキャンが不要となり、より高速な撮影が可能です。(図2、図3)

共焦点顕微鏡とライトシート顕微鏡の照明法の違い

図1 : 共焦点顕微鏡とライトシート顕微鏡の照明法の違い

共焦点顕微鏡の励起光照射

図2 : 共焦点顕微鏡の励起光照射イメージ

ライトシート顕微鏡の模式図

図3 : ライトシート顕微鏡(SPIM)の模式図

ライトシート顕微鏡のデメリットは、共焦点顕微鏡よりも分解能が劣る点です。ライトシート顕微鏡では励起光照射用の対物レンズと蛍光検出用の2つの対物レンズをそれぞれサンプルに近づける必要があります。しかし、高NAの対物レンズを使用しようとすると、対物レンズの作動距離の関係で対物レンズ同士が干渉してしまうため、ある程度の作動距離を持った低倍率、低NAの対物レンズを使用せざるを得ないのです。

また、シート光は励起用対物レンズから出射してすぐの位置ではきれいな画像を取得できるのに対し、対物レンズの出射側から遠い位置では、サンプルによる励起光の散乱や背景光の増加などの影響で画質が低下してしまうというデメリットもあります。これを克服するために、近年では2方向に対物レンズを配置し、両方向から励起光を照射するタイプのライトシート顕微鏡も販売されています。

観察手法 共焦点顕微鏡 ライトシート顕微鏡
撮影速度 遅い 速い
分解能 高い 低い
サンプルの光毒性 高い 低い

ライトシート顕微鏡の種類

SPIM(Selective Plane Illumination Microscopy)

Selective Plane Illumination Microscopy

SPIMとは、Selective Plane Illumination Microscopyの略で、レーザをシリンドリカルレンズで広げ光シートを作り出すライトシート顕微鏡法です。SPIMは後述するDSLMとは違いレーザの走査が不要になるため、光学系がシンプルになることに加え、カメラとの同期も簡易になるというメリットがあります。

DSLM(Digital Scanned Lightsheet Microscopy)

Digital Scanned Lightsheet Microscopy

DSLMとは、Digital Scanned Lightsheet Microscopyの略で、レーザをスキャンすることで疑似的に光シートを作り出すライトシート顕微鏡法です。DSLMでは、レーザをスキャンするタイミングと後述するライトシート読み出しモードを組み合わせて使用することで、SPIMよりも低ノイズな画像を取得できるというメリットがあります。

撮像例

ライトシート顕微鏡(ezDSLM)で取得したボルボックスの遊泳運動

データ提供:自然科学研究機構・生命創成探究センター・生命時空間制御研究室(基礎生物学研究所・時空間制御研究室)谷口篤史様、野中茂紀様

ライトシート顕微鏡(ezDSLM)で取得したミドリゾウリムシの遊泳運動

データ提供:自然科学研究機構・生命創成探究センター・生命時空間制御研究室(基礎生物学研究所・時空間制御研究室)谷口篤史様、野中茂紀様

ライトシート顕微鏡(ezDSLM)で取得したメダカの血球(GFP発現)

データ提供:自然科学研究機構・生命創成探究センター・生命時空間制御研究室(基礎生物学研究所・時空間制御研究室)谷口篤史様、野中茂紀様

サンプル提供:(NBRPメダカ)基礎生物学研究所・生物機能解析センター・光学解析室 坂本丞様

アメーバ運動と細胞質流動の3Dマルチカラー観察

データ提供:自然科学研究機構・生命創成探究センター・生命時空間制御研究室(基礎生物学研究所・時空間制御研究室)谷口篤史様、野中茂紀様

発生過程の定量的高速イメージング

データ提供 : Dr.Philipp L. Keller, Howard Hughes Medical Institute, Janelia Farm Research Campus, Ashbum, Va 20147, USA

ゼブラフィッシュ心臓拍動の2色同時イメージング

データ提供:the group of Dr.Jan Huisken from the Max Planck Institute of Molecular Cell Biology and Genetics.

技術紹介 : ライトシート読み出しモード

ライトシート読み出しモードは、ライトシート顕微鏡のS/Nを改善するsCMOSカメラの読み出し方法です。ライトシート読み出しモードでは、カメラの読み出しのタイミングを励起光の動きに同期して調整できるため、散乱の影響を受けないS/Nの高い画像取得が可能になります。

浜松ホトニクスは、この読み出し方式について特許を取得しています。

 

特許番号

JP06475307、JP05770958、JP06240056、JP05639670

ピックアップ製品:ライトシートマイクロプレートサイトメータ

CYTOQUBE ライトシートマイクロプレートサイトメータは、蛍光染色した2 次元および3 次元の細胞サンプルを蛍光イメージング・解析するシステムです。1536、384、96ウエルマイクロプレートに対応し、ホールウエル3 次元蛍光画像を高速に取得します。画像取得と同時に、個々の細胞や個々のオルガノイドの蛍光強度および3 次元の形態情報を解析し、結果を表示します。特許取得済みの独自技術「Zyncscan」により、圧倒的なスループットかつ簡便で、より信頼性の高い細胞アッセイを実現しました。創薬スクリーニングや毒性・安全性評価の効率向上、トランスレーショナル研究の推進に貢献します。

ピックアップ製品:ORCA-Fire デジタルCMOSカメラ

ORCA-Fire デジタルCMOSカメラは、高解像度、高感度、高速という3つの性能を兼ね備えたsCMOSカメラです。視野が広く、高速なためライトシート顕微鏡用のカメラとして最適です。

画素数 4432(H)× 2368(V)
量子効率 86 % (ピーク時) (Typ.)
読み出しノイズ 1.0 electrons rms
読み出し速度 115 フレーム / 秒

ライトシート顕微鏡では一般的に低倍率の対物レンズが使用されることが多いですが、低倍率の対物レンズで分解能を維持するためにはカメラの画素サイズを小さくする必要があります。ORCA-Fire デジタルCMOSカメラは4.6 μm × 4.6 μmと従来のカメラよりも小さな画素サイズとなっているため、ライトシート顕微鏡でも高い分解能で撮影が可能です。

ライトシート顕微鏡関連製品

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