超解像顕微鏡 超解像顕微鏡

超解像顕微鏡

超解像顕微鏡とは

超解像顕微鏡とは、通常の光学顕微鏡が持つ回折限界を超えた分解能でサンプルを観察することが可能な顕微鏡のことです。通常の光学顕微鏡の空間分解能は一般的に以下のレイリーの分解能の式によって算出されます。

 

δ = 0.61 × λ / NA

 

この式に従うと、可視光域(400 nm ~ 700 nm)ではおよそ162 nm ~ 284 nm 程度が分解能の限界ということになります。*1

 

超解像顕微鏡にはいくつかの方式があります。以降ではさまざまな種類の超解像顕微鏡についてそれらの仕組みを解説します。

 

*1 : 対物レンズのNAを1.5で計算。

SIM:構造化照明法

SIM(Structured Illumination Microscopy):構造化照明法とは、構造化照明と呼ばれるパターン状の励起光をサンプルに照射することで現れるモアレを観察し、それらのモアレ画像を再構成することで超解像画像を得る手法です。

モアレとは、周期性を持った模様が重なると生じるパターンのことで、周期的な縞模様をもつ構造化照明をサンプルに照射するとサンプルの微細構造との間にモアレが生じます(図1)。モアレ画像には微細構造の情報が含まれているため、構造化照明の角度や位相を変えて撮影した複数の画像から画像演算によって微細構造を再構成することで、元の画像の2倍程度の分解能を持った画像を生成することができます。

モアレ

図1 : モアレの例

PALM / STORM:ローカリゼーション法

ローカリゼーション法とは、蛍光分子をランダムに光らせ、その重心位置を1分子レベルで取得し、それらを重ね合わせ再構築することで超解像画像を生成する手法です。

通常の光学顕微鏡では、蛍光分子が顕微鏡の分解能よりも近接した距離に存在する場合、その分子からの発光は回折限界により重なり合って見えるため、それらを区別することはできません。しかし、近接した分子を別々に観察することができれば、その発光点の重心位置を求めることでサンプル内での座標を決定することができます。

ローカリゼーション法では、近接した分子を別々に観察するために蛍光のON/OFFが可能な特殊な蛍光物質でサンプルを標識します。その後、蛍光分子をランダムに発光させるように制御しながらカメラで何度も繰り返し撮影します。その後、撮影された画像において発光点の重心位置を求め、それらの画像を演算することで1枚の超解像画像を生成することができます。(図2)

 

ローカリゼーション法にはPALM(Photoactivated Localization Microscopy)とSTORM(Stochastic Optical Reconstruction Microscopy)という方式がありますが、PALMは蛍光性のタンパク質を使用するのに対し、STORMは合成色素を使用するという違いがあります。

ローカリゼーション法

図2 : ローカリゼーション法の超解像画像生成の流れ

STED:誘導放出抑制法

STED(Stimulated Emission Depletion): 誘導放出抑制法とは、蛍光分子を励起させるための第一のレーザと蛍光分子を脱励起させる第二のレーザを組み合わせて超解像画像を得る手法です。

レーザを用いて蛍光分子を励起する場合、レーザのスポットサイズは波長によって決定されます。レーザスポットサイズ以下の蛍光分子を観察したい場合、このレーザスポットを小さくする必要がありますがレーザスポットサイズは波長で決定されるため物理的に小さくすることはできません。(図3上)

STED法では励起用のレーザで励起された蛍光に対して脱励起用のドーナツ状のSTED光を照射することでレーザスポットの周辺部の励起光を脱励起し、中心の小さなエリアのみ蛍光を検出します。(図3下)これによりレーザのスポットサイズ以下の蛍光のみを検出することができるため、分解能を向上させることができます。

 

STED法ではドーナツ状のSTED光を用いることでXYの二次元方向の分解能を向上させることはできますが、Z方向の分解能を向上させることはできません。

共焦点顕微鏡とSTEDの違い

図3 : 通常のレーザ顕微鏡とSTED法の違い

各方式の比較

方式     メリット

デメリット

SIM
  • 多くの蛍光色素を使用可能
  • STEDと比較してZ軸方向の分解能が高い
  • ライブセルイメージングに使用可能
  • STEDやPALM / STORMと比較して空間分解能が低い
PALM/ STORM
  • 非常に高い空間分解能
  • 複数枚の画像を撮影し再構成するという方式のため、超解像画像の生成に時間がかかる
  • 使用可能な蛍光物質の種類に制限がある
STED
  • 深部のイメージングが可能
  • FRAP / FCSなどと組み合わせて定量解析が可能
  • 誘導放出を起こすため高強度のSTED光を照射する必要があり、蛍光色素の褪色が起こりやすい
  • 使用可能な蛍光色素の種類に制限がある
  • 特殊な光学系が必要

撮像例

SIMを用いた超解像画像

画素サイズの小さいORCA-Quest qCMOSカメラは、ORCA-Fusion デジタルCMOSカメラと比較してより高分解能の画像を取得できていることがわかります。

超解像画像 ORCA-Quest qCMOSカメラ

qCMOSカメラ / 4.6 μm  pixel size / 超解像システム:VT-iSIM

超解像画像 ORCA-Fusion デジタルCMOSカメラ

Gen Ⅲ sCMOSカメラ / 6.5 μm pixel size / 超解像システム:VT-iSIM

データ提供:Steven Coleman (Visitech international Ltd.)

ローカリゼーション法を用いた超解像画像

Hela細胞のタイムラプス超解像画像(ローカリゼーション法)

African green monkeyの腎臓細胞(BSC-1)のタイムラプスSTORM画像

ピックアップ製品 : ORCA-Quest 2 qCMOSカメラ

ORCA-Quest 2 qCMOSカメラは極めて優れた低ノイズ性能を持ち究極の定量イメージングを実現したカメラです。0.3 electrons rmsという極めて低い読み出しノイズにより光子数識別機能を実現しています。ORCA-Quest 2 qCMOSカメラは従来のqCMOSカメラと比較して、極めて低ノイズなスキャンモードにおける読み出し速度の高速化や紫外領域での感度向上などを実現しています。

超解像顕微鏡におけるローカリゼーション法では検出器として高感度カメラを使用します。ローカリゼーション法では超解像画像の生成のために蛍光の重心位置を求める必要がありますが、その精度を向上させるためにはカメラの画素サイズが小さいことに加え、ノイズが少ないことが重要になります。ORCA-Quest 2 qCMOSカメラは、従来のsCMOSカメラと比較して画素サイズが小さいことに加え、非常に低い読み出しノイズを実現しているため、ローカリゼーション法で使用するカメラとして最適なカメラです。

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