光刺激 光刺激

光刺激

光刺激とは

光刺激とは、生体や細胞などのサンプルに光で刺激を与え、その刺激による反応を観察する実験手法のことです。光刺激を用いた実験にはFRAP(光褪色後蛍光回復法)、オプトジェネティクス、フォトコンバージョン、フォトスイッチングなどさまざまな種類の実験手法があります。以降ではFRAPとオプトジェネティクスについて説明します。

FRAP(光褪色後蛍光回復法)とは

FRAPとは、Fluorescence Recovery After Photobleachingの略で、観察領域における特定の蛍光分子を強い励起光によって褪色(フォトブリーチング)させた後、同領域の蛍光輝度が回復するまでの時間を測定することで、観察領域外からの分子の移動速度等の動態を見積もることができる手法のことです。分子の動きが少ないほど蛍光の回復速度が遅く、分子の動きが多いほど回復速度も速くなります。

 

FRAPでは特定の領域のみを瞬間的に褪色させる必要があるため、非常に強い励起光、特定の領域にのみに絞って励起光を当てるための光学系などが必要になります。

励起光には一般的に共焦点顕微鏡などでも使用されているようなレーザが使用されます。そのレーザを特定の領域にのみ当てるためにはSLM(Spatial Light Modulator)やDMD(Digital Mirror Device)などが使用されます。

FRAPの原理

図1 : FRAPの原理

オプトジェネティクスとは

オプトジェネティクスとは、光学(Optics)と遺伝学(Genetics)を融合させた学問領域で、光遺伝学とも呼ばれます。オプトジェネティクスでは、チャネルロドプシンやハロロドプシンという光のエネルギーを受容して働く膜タンパク質を神経細胞などに発現させ、特定の波長の光を照射することで、標的の神経細胞を興奮させたり、抑制させたりすることができます。これを応用することで神経細胞のネットワークの構造や機能を解明することができます。

神経機能の解明のためには従来、電気刺激法が主に用いられていました。しかし、電気刺激法では標的とする神経以外にも、その神経がつながる先の神経細胞も同時に刺激してしまうというデメリットがありました。オプトジェネティクスでは、チャネルロドプシンなどの膜タンパク質を発現させた神経細胞のみを刺激することができるため、より精密に神経細胞の動きを観察することができるようになりました。

 

オプトジェネティクスでは、特定の神経のみを光で刺激したい場合があり、その際には特定のエリアにのみ光を照射する必要があります。また、複数の神経細胞を同時に刺激するような場合には、複数のエリアに光を照射する必要があります。浜松ホトニクスが提供するLCOS-SLMは、照明のパターンを任意に変えることができるため、特定エリアへの光の照射を可能にします。

オプトジェネディクスと電気刺激法による神経活性化の違い

図1:オプトジェネティクスと電気刺激法による神経活性化の違い

研究紹介:細胞内cAMP生成の光操作ツール

近年、生命科学分野では、さまざまな光操作が飛躍的な発展を遂げています。2006年以降、光操作のうち光遺伝学(Optogeneticsの)のツールとして、光感受性イオンチャネルが神経科学分野において必須の手法となり定着しました。一方、生体内では、イオンチャネル以外の信号も多数存在し、とりわけcAMP、cGMPなどの環状ヌクレオチドを介する細胞内シグナル伝達経路は、多様で重要な生体機能を担っています。cAMPが関わるシグナル伝達の主要な経路として、アデニル酸シクラーゼの活性化、またはホスホジエステラーゼの活性抑制によって細胞内cAMP濃度が上昇し、Aキナーゼ(PKA)が活性化されます。それに続き、電位依存性Ca2+チャネルやさまざな細胞応答が現れます。浜松ホトニクスではこれらの応答を誘導するcAMPの生成を光で操作することができるOptogeneticsツール『PAC』を研究しています。

ピックアップ製品 : LCOS-SLM

LCOS-SLM(Liquid Crystal on Silicon - Spatial Light Modulator : 空間光位相変調器)とは、電気的にレーザ光の位相を自由に制御することができるデバイスです。画素電極が2次元状に配置されたCMOSチップと、ガラス基板に蒸着された透明電極の間に液晶が挟まれた構造により、レーザ光の位相を2次元で制御することができます。PCから出力されるデジタル画像は専用の駆動回路によりアナログ信号に変換され、CMOSチップ上の画素電極に電圧を印加します。この電圧によって液晶分子が傾き、液晶の屈折率が変化することにより、各画素に照射された光の位相が制御されます。

光の位相を高精度に制御することができるLCOS-SLMは、光渦の発生などの研究用途から、顕微観察における収差補正や多点分岐による微小コードマーキングなどの産業用途に至るまで、多岐にわたって活用されています。

ピックアップ製品 : ゲート機能付き光電子増倍管モジュール

ゲート機能付き光電子増倍管モジュールは、ゲート動作を電気的に制御可能な光電子増倍管モジュールです。ゲート動作を応用し、光検出のタイミングをコントロールすることが可能です。光刺激の実験では、刺激用の光をサンプルに照射する際、実際に測定したい蛍光等の信号に加えて刺激用の別の光を検出してしまいます。これを避けるため刺激用の光を照射する際、ゲート機能を応用して不要な光を検出しないようにすることが可能です。

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