皮膚表皮角化細胞の3次元ライブセルイメージング解析

公開日:2024年12月6日

東京工科大学 応用生物学部 化粧品コース 皮膚進化細胞生物学研究室 様は、表皮のバリア形成機構に関する研究を行っています。表皮のバリア形成機構のメカニズムを解明するためには、表皮を3次元にイメージングする必要があります。このために当社のMAICO MEMS共焦点ユニットを導入いただいております。

同研究室の松井 毅 様にMAICO MEMS共焦点ユニットを導入した経緯やその使用感、今後の研究の展望についてインタビューを行いました。

 

研究について

-研究内容について教えてください。

 

当研究室では、皮膚の適応進化メカニズムを解明することを目的とした研究を行っておりますが、その中でも特に表皮のバリア形成機構に関する研究を行っています。皮膚は表皮・真皮・皮下組織からなる構造を持っていますが、表皮は多層構造を持った重層扁平上皮組織であり、その最上層には角層(角質層)と呼ばれる死んだ細胞層が存在します。この角層は太古の両生類が陸上進出を果たす際に獲得されたもので、陸上脊椎動物が陸上生活を営むために必須のバリアとなっています。角層は顆粒層の最上層のSG1細胞が特殊な細胞死コルネオトーシスを起こすことで形成されますが、当研究室ではこのコルネオトーシスが起こる過程を明らかにするため、光学顕微鏡を用いたライブセルイメージングの系を構築し観察を行っています。

松井 毅 様

松井 毅 様

皮膚表皮組織の断面図

皮膚表皮組織の断面図

表皮の3次元ライブセルイメージングにおける課題

MAICOを用いたライブセルイメージングシステム

MAICOを用いたライブセルイメージングシステム

 

通常の蛍光撮影用に当社のORCA-Fusion BTもご使用いただいています。

-表皮の3次元ライブセルイメージングにはどのような課題がありましたか。

 

私たちが観察対象としている表皮は多層構造を持っているため、3次元的にその構造をイメージングする必要があります。通常の蛍光顕微鏡とカメラではこの3次元構造を鮮明にイメージングすることができないため、共焦点顕微鏡を使用する必要がありました。ただ、共焦点顕微鏡は高額なため、自身の研究室で購入するのはハードルが高く、以前までは研究所や大学内の共通機器を使用して撮影を行っていました。

しかし、私たちの実験では顆粒層細胞がコルネオトーシスを起こす過程をタイムラプスイメージングする必要があるため、数日間連続してイメージングを行いたいケースもありました。一方で、共通機器は基本的に予約制のため使用できる時間が決まっていることに加え、イメージングの際に細胞培養を行うためのインキュベータが必要であったり、多点タイムラプスを行うための設定が必要であったりと、毎回撮影の準備にも手間がかかっていました。

上記のような状況もあり、やはり自身の研究室で共焦点顕微鏡を導入し、時間の制限や設定の手間にとらわれずに実験を進めたいと考えていました。

MAICO MEMS共焦点ユニット 導入の決め手

-MAICOの導入に至った理由や決め手があれば教えてください。

 

以前から蛍光イメージング用に浜松ホトニクスのsCMOSカメラを使用させていただいていたのですが、ちょうど共焦点顕微鏡が欲しいなと思っていたところに、既存の顕微鏡にアドオンするだけで共焦点顕微鏡が構築できるMAICO MEMS共焦点ユニットという製品が発売されたという情報を営業の方から伺い、まずはデモを依頼しました。

非常にリーズナブルな価格であったため画質や感度の面が気になっていましたが、実際にデモをしてみると、他社の共焦点顕微鏡と比較しても遜色のない高画質な画像が撮影できたため驚いたことを覚えています。リーズナブルな価格や他社の共焦点顕微鏡と遜色のない画質に加え、最低1波長の構成から購入ができ、あとから波長を追加できるサブユニット構造による拡張性や導入ハードルの低さ、また、装置のコンパクトさなどを総合的に評価し導入を決めました。

また、MAICOの特長であるクロストークのない多波長同時観察も決め手の一つになりました。当研究室ではライブセルイメージングを行っているためできるだけ多波長で同時に撮影をしたいという希望がありましたが、通常多波長で同時に撮影をしてしまうと波長の漏れ込みが起こるという問題があります。MAICOはこれを解決してくれているため、重宝しています。

 

直近ではMAICO MEMS共焦点ユニットの他にも、多点タイムラプスを行うためのXYステージや、焦点位置を維持するためのZドリフトコンペンセーターの導入が完了し、ようやく共焦点顕微鏡を用いたタイムラプスイメージングを行う環境が整ったため、これから実際に撮影を行おうとしているところです。今後予算が付けば残りの638 nmのユニットも追加したいと考えています。(現在は405 nm、488 nm、561 nmの3波長の構成で使用中)

松井 毅 様

撮像例

マウス皮膚表皮顆粒層細胞のZスタックイメージ

 

データ提供:東京工科大学 応用生物学部 食品・化粧品専攻 化粧品コース 皮膚進化細胞生物学研究室 松井 毅 様

 

EGFPを発現するマウス皮膚から顆粒層細胞シートを分離後、Hoechst 33342を用いて染色してZスタック画像を取得しました。

MAICO MEMS共焦点ユニットの使い勝手

松井 毅 様

-MAICOの使い勝手に関してはどのように感じておられますか。

 

かなりシンプルな操作感で使いやすいと感じています。例えばピンホールの設定は、細かい設定はできないもののS、M、Lの3段階で設定できるというのがシンプルで分かりやすく、毎年新たに研究室に入ってくる学生への説明もスムーズに行えています。また、それぞれのレンズにおける最適な撮影条件は、浜松ホトニクスが提供している分解能シミュレータがあるので、それを見ながらサンプルの構造や厚みに応じてZスライスの厚さを調整できるのも分かりやすくていいと思っています。

今後の研究展望

-今後の研究展望を教えてください。

 

現在は主にヒトやマウスの表皮をサンプルとして実験を行っていますが、今後は両生類や爬虫類等の表皮も観察し、種ごとの違いや進化のメカニズムを研究できればと思っています。その際は共焦点顕微鏡を用いた画像に加え、電子顕微鏡による解析や遺伝子の情報なども用いて、より詳細に研究を進められればと考えています。

 

また、当研究室は応用生物学部 化粧品コースに属しているため、皮膚科医様や化粧品メーカー様と共同で研究を行うこともあり、バリアが破綻しているアトピー性皮膚炎の研究や化粧品原料の評価などさまざまな研究を行っています。現在私が行っている表皮のバリア形成機構のメカニズム解明を行うためのライブセルイメージング評価系は、このような研究にも活かせる可能性があるため、新しい評価系の開発にも力を入れていこうと考えています。

お客様導入事例:皮膚表皮角化細胞の3次元ライブセルイメージング解析

研究者プロフィール

松井 毅 様

松井 毅
東京工科大学 応用生物学部 化粧品コース 皮膚進化細胞生物学研究室 教授

2000年3月     京都大学大学院 医学研究科 分子医学系専攻 修了
2000年4月     株式会社カン研究所 皮膚疾患研究グループ 主幹研究員
2006年10月   京都大学 産学官連携研究員
2006年11月   大阪大学大学院 医学研究科 特任研究員
2007年4月     大阪大学大学院 生命機能研究科 分子細胞情報学講座 助教
2007年11月   東京医科歯科大学 難治疾患研究所 メディカル・トップ・トラック(MTT)プログラム 特任講師
2011年4月     京都大学 物質-細胞統合システム拠点 柊研究室 特定拠点助教
2013年4月     国立研究開発法人 理化学研究所 統合生命医科学研究センター 皮膚恒常性研究チーム 上級研究員
2016年4月     国立研究開発法人 理化学研究所 生命医科学研究センター 皮膚恒常性研究チーム 副チームリーダー
2021年4月     現職

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東北大学 電気通信研究所 計算システム基盤研究部門 ナノ集積デバイス・システム研究室 様は、脳型計算などの非ノイマン型計算に着目し、それらのハードウェア基盤技術に関する研究を行っています。その中で、山本 英明 様の研究グループであるナノ集積神経情報システム研究分野では、半導体微細加工・神経細胞培養・数理モデリングなどを統合し、生物の脳の機能をボトムアップに解析するための新しいin vitro系の開発を行っています。このin vitro系を製作する過程では神経細胞を培養する必要がありますが、培養した神経細胞が凝集し立体構造を構築した際に、これを3次元にイメージングする目的で弊社のMAICO MEMS共焦点ユニットを導入いただいております。

同研究室の准教授である山本 英明 様、MAICO MEMS共焦点ユニットを使用した神経細胞の観察や解析を担当している室田 白馬 様に、MAICO MEMS共焦点ユニットを導入した経緯やその使用感、今後の研究の展望などについてインタビューを行いました。

開発背景や特長、価格を記載した資料を公開中!

お使いの倒立顕微鏡に取り付けるだけで共焦点蛍光イメージングを可能にする「MAICO MEMS共焦点ユニット」。

本資料では、MAICOの開発を行うことに至った経緯や弊社で「My confocal」を実現できる製品を開発できた技術的な背景などをご紹介しています。製品の特長や価格情報も掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

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MAICOの製品コンセプトや製品の概要をご紹介します。

サブユニット構造をはじめとしたMAICOの持つ優れた特長をご紹介します。

MAICOでは多波長同時観察で課題となる波長間のクロストークを低減した撮像を可能にしています。どのようにクロストークの低減を実現したのか、その技術をご紹介します。

MAICOは感度、波長のことなるラインアップをご用意しています。

ボケが少なく高コントラストで解像度の良い画像が得られる共焦点顕微鏡の原理を解説しています。

MAICOを用いた撮像例を動画でご紹介します。

MAICOに関する、よくあるご質問を掲載しています。

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